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ふるさと納税“流出深刻”…都市部の逆襲 「年収1000万円」プロデューサー募集も

2023年1月19日 21:28
ふるさと納税“流出深刻”…都市部の逆襲 「年収1000万円」プロデューサー募集も

ふるさと納税の競争が激化する中、都市部では“逆襲ののろし”が上がりはじめています。背景には、市民が他の自治体に寄付する“税の流出”があります。三重・四日市市では、ふるさと納税の戦略プロデューサーを募集しています。なんと年収は1000万円です。

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東京・渋谷区にある「VERMICULAR HOUSE」は、”料理をする人のあこがれ”バーミキュラの製品が置いてある調理器具専門店です。余分な水分を瞬時に蒸発させ、シャキシャキの野菜炒めが作れるというフライパン(1万7930円)、無水調理ができるホーロー鍋(3万5090円)が人気です。

この人気商品を、“お得なカラクリ”で、“実質2000円”で手に入れることができます。

バーミキュラ フラッグシップショップ代官山 桑原美穂マネージャー
「名古屋市がふるさと納税のリニューアルをはかる際に、お声がけをいただきました」

本社があるつながりから、名古屋市がふるさと納税の返礼品として、100種類以上のバーミキュラ製品を採用しました。その背景にあるのは、市民が他の自治体に寄付することによって起きる“税の流出”です。

名古屋市財政局 近藤勝哉・資金課長
「昨年度でいいますと、“流出”が109億円、本年度も135億円見込まれておりますので」

そこで名古屋市は、全国からの寄付を増やそうと、バーミキュラ製品やフィットネス器具「シックスパッド」など地元企業による人気の品を返礼品に採用。寄付額を約3倍に増やしました。

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“税の流出”の状況は、名古屋だけではありません。総務省によると、神奈川県・横浜市、川崎市、さらに大阪市など特に都市部での流出が深刻となっています。

流出額が多い自治体
〈1〉神奈川・横浜市
〈2〉愛知・名古屋市
〈3〉大阪・大阪市
〈4〉神奈川・川崎市
〈5〉東京・世田谷区

そこで東京・世田谷区は、“逆襲”へと打って出ました。世田谷区では、2022年度の流出額が過去最多となる約87億円となりました。これを受けて、2022年11月、返礼品を大幅に強化しました。

その一つが、予約がすぐ埋まるほどの人気洋菓子店「パティスリィ アサコ イワヤナギ」のパフェです(ドリンク付き・5830円)。職人の美的センスが光るパフェは季節ごとに変わり、今回はバレンタインを意識した華やかさを演出しました。

他にも「有名温泉旅館のクーポン券」など、区外の人にも認知度が高い返礼品を取りそろえました。世田谷区では昨年度の寄付額は約1億5000万円でしたが、わずか1か月あまりで昨年度の半分ほどの寄付があったということです。

世田谷区ふるさと納税担当 高井浩幸さん 
「約7500万円の寄付を頂戴したので、大変、大きな反響をいただいていると」

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工業都市の三重・四日市市では“奇策”へと打って出ました。四日市市では返礼品を工夫し、5000万円の寄付を集めました。その一方で、流出額は8億5000万円となり、赤字は過去最多となる約8億円となりました。この金額は市の小学校全体の給食費に相当し、今後、市民サービスの低下を招くおそれがあります。

これを受けて、2022年12月から四日市市では、新たな返礼品の開発などに取り組む「ふるさと納税戦略プロデューサー」の募集を開始しました。“ふるさと納税専門”の職員で、年収は約1000万円です。

三重・四日市市 森智広市長
「四日市市のふるさと納税を盛り上げたい、熱い思いを持っている方を募集しておりますので」

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ふるさと納税の競争が年々激化する中、都市部で“逆襲ののろし”が上がりはじめています。