手作り?効率化?揺れる「大戸屋」株主総会
定食チェーン「大戸屋」の株主総会が25日に開かれました。こだわりのできたて調理を売りにしてきた大戸屋に大株主が突きつけたのは、コスト削減。日本テレビは、対立する両者の舞台裏を取材しました。
◆“手作り”定食がウリの大戸屋、業績不振が続き…
炭火で焼きあがったのは、脂ののった『サバ』。添えるのは、その場でおろしたばかりの大根おろしです。こんな“お袋の味”を思わせる“手作り”定食がウリの大戸屋。しかし、昨年度は客数が大きく減少し、上場以来初の赤字に転落。業績の不振が続いています。
こうした中、「大戸屋」は、経営の主導権をめぐり大揺れとなっていました。25日に迎えた株主総会では──
大戸屋HD・窪田健一社長「提案株主(コロワイド)さまが掲げる施策では大戸屋の未来はない」
「未来はない」とまで言い切らせた「提案株主」とは、「コロワイド」のことです。
◆「コロワイド」の“効率化”提案とは
「コロワイド」は、焼き肉チェーンの「牛角」や「かっぱ寿司」などを展開する大手外食企業。大株主として、大戸屋の経営立て直しへ、自社の専務など新たに7人の取締役を送り込むと提案していました。
コロワイド・澄川浩太取締役「仕入れ調達コストの削減ですとか、物流費の削減、あとは内製化といった企業努力の部分で商品を値下げする原資を捻出して、値下げという形で(お客様に)還元させていただきたいと」
コロワイド側が経営の効率化として挙げているのは、「セントラルキッチン方式」の一部導入です。『セントラルキッチン方式』とは、仕入れた食材を工場である程度調理してから、それぞれの店舗に運ぶシステム。店内での作業を減らすことでコストを下げ、商品の価格も抑えられるといわれています。
しかし、“かつお節”さえ注文を受けてから削るほど“手作り”にこだわる大戸屋は、コロワイド側の改革に抵抗しているのです。
大戸屋HD・窪田健一社長「味を守るってのは食べ物屋さんの根本、根幹ですので、一概にセントラルキッチンを使ったからといってコストダウンを図れるのかというのは、なかなか難しいと」
◆“キーパーソン”創業者の長男・三森智仁氏
25日の株主総会で、多くの賛同を得ようと激しく争っていた両社。日本テレビは、この争いの“キーパーソン”に話を聞くことができました。
「大戸屋」の創業者の長男、三森智仁氏です。
現在、介護施設にいる高齢者向けの外食デリバリー会社を経営しているという智仁氏。父親の死後、現経営陣と対立し、大戸屋を去りましたが、今回、コロワイド側の提案に賛同し、大戸屋の経営に返り咲くか注目されていました。
大戸屋創業者の長男・三森智仁氏「変えられるものと変えてはいけないものと、変えてもいいものを探していくということが、非常に大事なんじゃないかなと思います。コロナショックというものが社会情勢を一気に変えてしまいましたので、私としては1分1秒これが勝負として大きいと思いますので」
◆迎えた株主総会、結果は…
そして迎えたこの日。
大戸屋HD・窪田健一社長「今後大戸屋が取り組んでいくことに対して、株主様にご理解をいただけた」
提案は反対多数で否決され、現経営体制が守られた大戸屋。総会を終えた株主は──
株主「大戸屋そのまま続けていってほしいと思って来ていたので、だからよかったと思います」
株主「(今後)どうやって差別化を図っていくのかとすごく思いました」
お袋の味を守りながら、どう経営を改善していくのか、知恵と手腕が試されます。