KDDI通信障害で「119番できず」――緊急通報にも影響 他社回線使う「ローミング」導入、10年以上実現しないワケ
KDDIの通信障害では、119番など緊急通報も通じないという深刻な問題が浮き彫りになりました。他社回線を使って緊急通報する「ローミング」は東日本大震災の教訓で検討が続けられてきましたが、いまだ実現できていません。その背景や展望を考えます。
■通信障害でも有効…ローミングとは
有働キャスター
「約86時間ぶりに、ようやく全面復旧となったKDDIの通信障害ですが、特に深刻だったのが、119番など命に関わる『緊急通報』ができなくなったという問題です。この緊急通報がつながるようにする方法として、『ローミング』があります」
「ローミングとは、例えば災害時など119番や110番といった緊急通報をしたい時に、『自分が契約しているauの回線が使えない』となった場合、代わりにドコモやソフトバンクの回線を使う。つまり、他の携帯電話事業者の回線を使って、電話や通信をすることです」
「すぐできるようにした方がいいのでは?と思いますが…」
■「ライバル関係」「技術面」の事情
小野高弘・日本テレビ解説委員
「東日本大震災で携帯電話がつながらなかった教訓から、『ローミングできるようにしたらどうか』と検討はされてきました。ただ、簡単にいかない事情もあります」
「そもそも、携帯電話事業者同士はライバルなので、通信障害が起きないよう、それぞれが設備投資して競争しています。そのため、設備投資せずにローミングで他社のネットワークを使うことは、適当ではないということです」
「さらに、ローミング先に通信が集中してしまい、そちらの回線もパンクしてしまう可能性があるといいます」
「また、これまで難しかったのは技術的な課題があったからです。震災当時は3G回線を使っていました。3Gは会社によって方式が違い、ローミングするのは難しいものでした」
「ですが今は違います。4G、5Gの時代になってきています。ITジャーナリストの石川温さんは『4Gや5Gが普及したことで、難しさは解消されつつある』と言います」
「その上で石川さんは『緊急通報のローミングはヨーロッパでは実施できている国も多い。日本も導入を真剣に進めるべきだ』と指摘。総務省は今回の事態を受けて、『引き続き検討課題と認識している』としています」
■落合さん「歩み寄りや話し合いを」
有働キャスター
「緊急通報のローミング、早く実現できないものですか」
落合陽一・筑波大学准教授(「news zero」パートナー)
「できた方がいいですし、3Gから4G、5Gになってきたおかげで、技術的にはできるようになってきたわけなので、各社が歩み寄ったり、話し合いの場を持てば良い話です。例えばJRは振替輸送しますから、『それくらいしてよ』と携帯電話会社には思っています」
有働キャスター
「確かに、緊急通報は命に関わることですからね。ライバル会社が手を取り合って、政府も音頭を取って。ぜひ、しかるべき立場にいる方々、お願いします」
(7月5日『news zero』より)