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中国企業が狙う“お買い得”な日本人労働力――「歯ブラシ」「マスク」を日本の工場で 魅力は「日本製」と人件費

2022年11月9日 11:22
中国企業が狙う“お買い得”な日本人労働力――「歯ブラシ」「マスク」を日本の工場で 魅力は「日本製」と人件費

歯ブラシやマスクなどを日本で生産し、中国で販売する中国企業があります。日本製は中国でも人気ですが、検品などの丁寧な仕事ぶりに加えて注目されているのは、人件費です。日本人労働力の「お買い得感」が広がっています。大阪の生産現場を取材しました。

■中国で人気…「メイドインジャパン」

大阪市生野区にある、中国企業「慎興ブラシ株式会社」の歯ブラシ工場を訪ねました。中国に出荷する商品を日本人従業員が製造し、上海の百貨店などで販売されています。

中国で人気が高い、日本製の日用品。健康志向で竹炭入りの歯ブラシや、旅行の再開でトラベルセットが売れているといいます。上海の高島屋にいた客は「日本の歯ブラシは品質が良いでしょ」、「値段は高くない。中国製と同じくらいです」と話しました。

■なぜ工場を日本に?「働きぶり」に注目

慎興ブラシ株式会社は本社も販売拠点も中国ですが、なぜ工場を日本にしたのでしょうか。その理由は、日本人ならではの働きぶりにありました。

代表取締役専務の安田重満さんは「(日本人従業員が)検査で“不良”とはねた分です。糸がちょっと広がってますでしょ」と製品を示しました。

検品で、わずかな糸の広がりを発見。パッケージ化した後も、歯ブラシの毛が入ったものや台紙がはみ出たもの、パッケージのわずかなへこみも見逃しません。この丁寧な仕事こそが、中国にはないメイドインジャパンの価値だと話します。

同社の代表取締役社長の汪霖さんは「日本の従業員は真面目で丁寧です。不良品率がやっぱり低い」と言います。返品コストの削減効果があることに加え、人件費も魅力です。汪さんは「中国の(人件費)コストは毎年上がっていますから。1割くらい上がっています」と話します。

■マスク工場でも…日本と中国の人件費コストは?

去年から中国の資本を投入し、大阪・富田林市でマスクを製造するカップリーディング工業株式会社でも日本人従業員が働いています。定年退職した人や、子育て中の女性を採用しています。

林励鯉代表取締役は「今は中国と(日本の人件費)コスト変わらないです」と言います。

日本の労働力の“お買い得感”が広がっています。

■世界的な企業も「日本の人材」に注目

世界的な企業も注目しています。中国のハイアールグループ・アクア株式会社に半年前、日本の広告制作会社から転職し、広報を担当する戦略本部の木田菜摘さん(28)に話を聞きました。

「転職して良かったところは、やった分だけ評価してもらえることです。年齢が高いからといって決定権があるのではなくて、若くても(あります)。直接社長に説明にお伺いして、やりがいにもなっているかなと」

10年前、三洋電機の白物家電事業を買収したハイアールグループでは、年功序列など日本独自の制度を廃止。若手にもチャンスがあり、キャリア形成につながるといいます。

木田さんは「中国(本社)とのやり取りはほとんど毎日です。向こう(中国)の方はスピード感が速い。グローバルなやり取りをして私も成長できています」と話します。

■発想の転換…求められるのは「主体性」

求めるのは、即戦力となる日本の人材です。三洋電機からアクア株式会社に移り、ドラム式洗濯機を手がける商品本部の松本泰良さんは、商品の企画で発想の転換を求められたといいます。

「(日本だと)次の商品というとマイナーチェンジを考えがちなところがありますが、(目標)2桁成長をする視点で考えると、既存商品のマイナーチェンジではなくて、新しい商品を市場投入できないかと(考えます)」

日本の人材への期待について、同社の梶山和昭・戦略本部長は「(日本の人材で)ジャパンTOグローバル。日本で開発した技術を海外に輸出していこうと。年齢・性別で基準を設けているわけではなく、高い目標を自分で設定できるか。主体性を求めます」と言います。

(11月8日『news zero』より)