容器や食材で“脱炭素”環境に優しい機内食
空の旅の楽しみといえば、機内食。コロナで旅客が激減した航空業界ですが、機内食を工夫することで集客を図ろうとしています。そのキーワードは「脱炭素」。新たな機内食の開発に取り組んだ、舞台裏を取材しました。
肉汁あふれるハンバーグに、半熟卵がのった「ロコモコ」。そして、日本の代表的などんぶり「牛丼」。8月からANAの国際線で提供される機内食ですが、実は容器に秘密があるんです。
環境へ配慮して、およそ2年前から始まった「紙容器の開発」。開発チームは“ある課題”に取り組んでいました。
ANA開発担当者・今林大亮さん「機内での温めが、スチームオーブンしかないので、水分を吸うと柔らかくなってしまうんですね」
一度に多くの食事を、むら無く温められるため、機内では水蒸気のスチームオーブンが使われます。しかし、紙だと加熱に耐えられない場合、容器が変形し、フタが開きやすくなります。少しずつ「容器の強度」を改善し、6回目のテスト。フタの裏側に特殊な加工をした事で、水蒸気の影響を受けにくくなりました。料理の温まり具合も合格点でした。
コロナで厳しい経営が続く航空業界ですが、「脱炭素」への転換も大きな課題です。ANAでも、ジェット燃料の改良など「脱炭素」に取り組んでいて、紙容器への変更も、その一環。取り組みをアピールし、集客につなげたい狙いもあります。
そして、行われた上空1万メートルでの最終テスト。地上より気圧が低く、温まりにくい環境でも、ちゃんと加熱できるかがポイントです。合格の目安は60℃ですが…。中までしっかり熱が通って、上空でのテストにも合格。
この容器にすることで、ANAの機内で出るプラスチックゴミを、3割ほど減らせると言います。
ANA開発担当者・今林大亮さん「プラスチックゴミの量を減らしたいというところから、スタートしました。使い勝手を意識せずにおいしく召し上がっていただけたら」
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一方、JALの機内食では、食材に工夫がありました。
国際線で出される朝食。オムレツに使われている海藻のソースや、さつまいもなどは、世界自然保護基金などが定めた食材。世界的に活躍する食のプロデューサー監修の元、開発しました。
食プロデューサー・狐野扶実子さん「キヌア(南米産の穀物)というものなんですけど、栄養価が高いというだけではなくて、過酷な気候にも耐える、そういった植物で」
栽培が簡単で、育てる時に出る温室効果ガスの量が、少ない作物だといいます。
食プロデューサー・狐野扶実子さん「社会も環境も全て考えながら、少しですけれども、そういった(環境への)意識を、皆様と共有できたらなということで」
容器や食材で、機内食にも広がる「脱炭素」。「空の旅」の楽しみも変わっていきそうです。