コロナ禍の老舗「塩トマト大福」で反転狙う
コロナ禍で土産物などの需要が激減した菓子業界。苦しい1年を経て老舗菓子メーカーが変わり種の大福を発売し、自分用に楽しむ“おうち需要”に期待しています。
■「季節の生菓子」で“おうち需要”つかむ
菓子製造の老舗「如水庵」(福岡市)が今月から販売を始めたのは、「塩トマト大福」。果物のような甘みが特徴のトマト「フルティカ」を丸ごと1個白あんと餅で包んだ大福に、トマトの味を引き立てる焼き塩をまぶしました。
如水庵はこれまでも毎年この時期にトマト大福を販売していましたが、いちご大福やぶどう大福と比べると人気は定着しませんでした。そこで、「塩トマト大福」として生まれ変わらせたということです。
餅に馴染みやすく口当たりも良くなるよう、塩をパウダー状に細かくするなど工夫を重ねました。開発に力を入れた背景には、新型コロナによる菓子需要の変化があります。
如水庵ではこの1年、土産物の売り上げが激減した一方で、家で楽しむ菓子は売れたと分析。特に、その時期にしか食べられない「季節の生菓子」が好調だったということで、塩トマト大福もその1つとして、今後に期待しているということです。
■「老舗」だからこそ…生き残りのカギは柔軟性
帝国データバンクの実態調査によると、去年6月から9月に決算を迎えた菓子メーカーのうち、前年同期比で「減収」となった企業は77.6%。中でも苦戦が目立つのは、創業から100年以上のいわゆる老舗です。
調査を担当した帝国データバンク情報部の下川純さんによると、老舗には、店舗や百貨店での販売を主軸としているところが多く、コロナによる来店減の影響を強く受けたのではないかということです。
ただ、老舗であっても過去のヒット商品にこだわりすぎず、新しい味に挑戦したり、新しいキャラクターとのコラボ商品を開発したりした企業は比較的売上げを維持しているということで、「販路も商品も、老舗だからこそこれまでと違うターゲットに目を向ける柔軟性が必要」だと指摘しています。
「如水庵」の担当者は「これから気温も上がり、塩分が欲しくなる時期。旬のトマトを大福でがぶっと食べてほしい」と話しています。
「塩トマト大福」はオンラインストアなどで7月中旬までの期間限定で販売するということです。