「約3か月で24円」急激な“円高”で生活に変化は? “値下げ”や“賃上げ”は…
急激な円高が進んでいます。“約3か月で24円近く円高に振れる”という激しい動きとなりました。今回の円高で、物価高は落ち着くのでしょうか。経済と為替・企業動向に詳しい国際テクニカルアナリスト・福永博之氏が解説します。
■急激な“円高"変動を支える「大口の海外投資家」
藤井貴彦キャスター
「円相場は“約3か月で24円近く円高に振れる”という激しい動きとなりました。この円高の理由について、どのようにお考えですか」
福永博之氏
「アメリカのインフレ傾向が鈍化しています。これまでは過去にないぐらいの上げ幅を繰り返していた“金利上昇”が、少し上げ幅が縮まるであろうということで、『アメリカの金融引き締めそのものが、少しずつ緩和していくであろう』とみられています。」
「例えば、ドルの金利が高いとすると、ドルを買って預金をする場合、アメリカが利上げをすると、ドルに魅力が出ていたということです。それが“ドルを買って円を売る”円安の動きだったわけです。一方、直近では円安から円高方向に動いているわけですが、実際にこの動きをけん引しているのは、“大口の海外投資家”です。なぜかといいますと、金利の安い円を借りて、ドルを買うということをこれまでやっていたために、そのさや分・差額分が為替で利益になっていましたが、その分、借りる円のコストが上がっていくということが、今度は『円を返さなきゃ』ということで、これまで持っていたドルを売って、円を買っている“逆の流れ”が起こっているわけです。円安から円高方向に動いているという急激な動きは、大口の投資家が変動を支えているということだと思います」
■円安で値上がりしたモノ 円高で値下がりは?
藤井キャスター
「私たちの周りの日常の世界では『やっぱりモノの値段が上がっちゃったよな』、『円安って、大変だったよな』ということで、みんな苦しんでいたと思います。この円高によって、昨年の円安によって値上がりしたモノの値段は下がっていくとお考えですか」
福永博之氏
「残念ながら、やはり『値段はすぐには下がらない』と考えています。製品を作る際に原料になる商品の値段が下がっても、そもそも製品を作る時に、既にコストが上がっているわけですから、その分、企業が価格を転嫁することがタイミングとして遅れます。出来上がった製品が全部なくなってから初めて、もう1回リセットされることになりますので、そういう意味では、『すぐには値段が下がらないだろう』と思われます」
■円高で“将来的な賃上げの可能性”も…
藤井キャスター
「モノの値段は、『在庫がはけるまでは、同じような値段で取引されていくのではないか』ということですが、今回の円高によって、私たちの暮らしに良い影響は何かあるのでしょうか」
福永博之氏
「在庫がはけた後も、例えば円高が続いて、価格の先が見通せないということで値下げできずに価格がそのままですと、コストが下がった分、原料価格が値下がりした分の利ざやが生まれるわけです。その利ざや分が企業の利益になってきますと、今回の春闘には間に合わないかもしれませんけど、将来的な“賃上げ”の可能性がでてきます。例えば、夏のボーナスや年末のボーナスに反映されるなど、一部の恩恵を受ける企業に限りますが、“賃上げ方向に向かってくる”というのが考えられます。そのへんが将来的に明るい材料になるのかなと思います」
藤井キャスター
「急激な円安・急激な円高というところで、私たちの生活は左右されていますが、生活が安定するまでは、世界の動きから少し遅れてくることになりそうです」
(1月16日放送『news every.』より)