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東京メトロが新線建設へ 動き出す2線計画

2021年7月24日 15:40
東京メトロが新線建設へ 動き出す2線計画

■有楽町線延伸と品川地下鉄構想

東京の地下鉄の新線計画の中で実現に向かうのは2線。1つは東京メトロの有楽町線延伸で、豊洲から江東区を縦断して住吉まで延ばす計画。東京都東部の観光拠点へのアクセスや、交差する東西線の混雑緩和が期待される。

もう1つは品川地下鉄構想で、品川に新駅を造った上で白金高輪とつなぐ。リニア中央新幹線始発で国際拠点としても発展中の品川駅に初めて地下鉄が通れば、玄関口としての利便性も高まる。

東京都は新型コロナウイルス感染収束後に訪日外国人を大きく増やし、東京の国際力強化を狙う。Co2削減など環境に配慮した都市作りの面からも、地下鉄整備は世界的に進められる傾向にある。

■硬直していた新線計画

事業の主体としてはかねてより東京メトロが浮かんでいたが、2004年に東京メトロが設立された時、新線の建設は行わない方針をはっきり表明していた。

東京メトロにとって、新線建設で会社の財務が傷めば早期の上場にマイナスだ。このため、東京の地下鉄の新線計画が2016年に整備対象として示された後も、誰が事業主体になるのかや費用負担をめぐって硬直していた。

東京メトロの株主として、新線を建設してほしい東京都。一方、国(財務省)は、株の売却益を東日本大震災の復興財源に充てるために確実な売却を望んでいた。

東京メトロは、財務の心配なく上場し、民間企業としてより自由に事業を展開したい。それぞれの条件が折り合わなかった。

しかし去年から、新線建設と東京メトロ株売却の両方の機運が盛り上がり、公的な財政支援を使うことなどで東京メトロによる新線建設と株売却を両立させる策が、国交省を中心に議論された。

■株2分の1の売却で、新線にGO!

15日に出た国交省の有識者会議の答申は、地下鉄の新線計画2線について「早期の事業化を図るべき」とし、東京メトロに事業主体になるよう求めた。完全民営化をめざす経営に悪影響を及ぼさないように、公的な補助金や融資を活用することが適切だとしている。

また、株式の売却は段階的に進め、当面、国と東京都が2分の1ずつを売却して、新線建設への関与と復興財源の確保ができるようにした。それぞれが許容できるぎりぎりのバランスが示されたのだ。

これを受けて国交省は、来年度予算の概算要求で新線建設にむけた調査費を要求する方針。新線建設への一歩を踏み出す。

東京都は新線を最大限に生かして魅力的な国際都市になれるのか?民営化に向かう東京メトロは、民間企業として経営のガバナンスも高める必要がある。

国(財務省)は復興財源のために、最良の時期と形での株売却が望まれる。

それぞれの課題をかかえながら、10余年後の首都東京を見据えた大プロジェクトがスタートする。

(図:東京メトロ有楽町線の延伸計画<国交省資料より>)