ガス代高騰に“無縁の街” 大手都市ガス比で“4割”安いワケは…「市の魅力の1つに」
燃料代の高騰が止まらず、下町の銭湯からは悲鳴が上がり、家計にも重くのしかかっています。こうした中、“ガス代の高騰とは無縁の街”が千葉県内にあります。街では「ガス代の安さ」を売りにして、移住者を呼び込もうとしています。安さの理由を取材しました。
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東京スカイツリーのお膝元、東京・墨田区の銭湯「押上温泉 大黒湯」を取材しました。70年以上愛されていて、下町情緒あふれる銭湯です。お湯の温度は最高42℃と、ちょっと熱めが特徴ということです。常連好みの湯加減を維持するために必要なのが「ガス」です。
しかし今、ガスも例外なく値上げの影響を受けています。この銭湯の1月の請求額は、なんと…。
押上温泉 大黒湯 新保卓也店主
「1月の料金は、172万円という料金がかかりました」
これまでのガス代は月70万円ほどで、2022年秋ごろは100万円ほどになりました。そして1月には一気に過去最高額になったといいます。
ガス代に驚いた店主の妻は、ツイッターに「つらい。営業努力ではどうしようもできない勢い」と領収書の写真とともに、悲痛な胸の内を投稿しました。対策は、レンタルタオル代を20円から40円に値上げしたくらいだといいます。
押上温泉 大黒湯 新保卓也店主
「今までも経営努力はたくさんしてきているつもりなので、『何をしたらいいんだろう?』って思っています」
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ガス代の高騰は、家計にも重くのしかかっています。都市ガスを利用する人は、値上がりを実感していました。
都市ガスを利用する人(3人暮らし)
「思っていたより(ガス代が)上がっていたので、ビックリしましたね」
都市ガスを利用する人(4人暮らし)
「ガスストーブを使っているので、最近はしんどくなってきた」
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こうした中、“ガス代の高騰とは無縁の街”がありました。
千葉・茂原市にあるイタリアンレストラン「ペッシェ アズーロ」を訪ねました。池田征弘シェフが、直近のガス代の請求書を見せてくれました。営業中にガスを使い続ける飲食店にもかかわらず、請求額は3万1570円でした。
ペッシェ アズーロ 池田征弘シェフ
「ほかの地区の方たちには『うらやましいな』と言われるくらい安いです」
安さの理由について、地元のガス会社に聞いてみました。大多喜ガス・総務グループの木村和彦マネージャーは「地元でとれます天然ガスを優先的に使っているといったことが、1つ大きな要因」と説明しました。
実は千葉県直下には「南関東ガス田」が広がっています。この天然のガス田の生産量は、全国2位です。
多くのガス会社が天然ガスを輸入に頼る中、大多喜ガスはガスを地産地消しているため、標準的な家庭の使用量・38立方メートルで、価格は約5310円です。都内の大手都市ガス会社と比べると、4割ほど安いといいます。
周辺の川で天然ガスが湧いて出ている様子がみられるなど、まさに茂原は「ガスの街」です。「ガス代の安さ」という魅力に気づいた茂原市に、今後について聞きました。
茂原市企画政策課 鶴岡隆之室長
「今後は“移住促進”の市の魅力の1つとしてPRしていきたい」
これまでは都心へのアクセスなどを売りにしてきましたが、今後は「ガス代の安さ」をPRし、移住を呼びかけていきたいということです。