【解説】「為替介入」って何? 歴史的な円安続き注目集まる
ここのところ財務省や為替のディーリングルームは早朝から毎日カメラがひしめき合う展開となっています。歴史的な円安が続き、政府・日銀の「円買い・ドル売り」為替介入に注目が集まっているからです。今、あらためて為替介入とは何なのでしょうか。
Q.「政府・日銀」なのになぜ財務省に取材陣が集まっているのでしょうか?
A.為替介入を決定するのが財務大臣だからです。
流れはこうです。
日銀の為替課が市場を細かくウォッチし、財務省の為替市場課と情報を共有。
介入の判断は財務官が下します。
すぐさま大臣に伝えられ、了承がとれれば、日銀に対して介入額などの詳細が伝えられます。
財務省の為替市場課長は着任の際、「為替介入については(情報共有せず)みなさんを飛ばしますから」と挨拶してまわると言われています。
つまり、通常の案件では必要な省内幹部の情報共有というステップを飛ばすほど、為替介入については機密保持が徹底されています。
Q.「円買い・ドル売り」の為替介入って何をするの?
A.日銀はドルを一般の銀行に売り、代わりに円を買います。
銀行側は日銀から買ったドルを市場に売り、日銀に売る円は市場から買います。
10月22日の未明にかけておこなわれたような海外市場での取引では日銀が直接取引をすることもあれば、海外の中央銀行にお願いすることもあります。
Q.「覆面介入」って何?
A.介入の有無について公表しないことです。
10月22日未明にかけての介入は鈴木財務大臣も神田財務官も「公表しない」としています。
他にも「覆面介入」の可能性が指摘されているタイミングがありますが、あえて公表しないことで投資家の疑心暗鬼を誘い、投機的な動きを抑制する効果を狙っているとも言われています。
ただ、財務省は月末に介入実績を公表していて、過去1か月間の介入に関する合計額がここでわかります。
Q.「単独介入」「協調介入」って何?
A.「単独介入」というのは、日本政府の資金のみを使うひとりぼっちの介入のことで、「協調介入」というのは外国の通貨当局がいっしょに実施することです。
「協調介入」のほうが使われる資金の額が大きくなり、関係国が一致して取り組んでいるというメッセージが伝わるため、一般的に効果が高いと言われています。
今回、日本がおこなった一連の介入は単独介入だったとみられています。
この問題に詳しいエコノミストは、「少なくともアメリカの中間選挙までは協調介入はない。でも、ドル全面高については必ずしもアメリカ全体がハッピーなわけではないので、 中間選挙後は変わるかもしれない」と話しています。
Q.介入に「限界」はある?
A.日本の外貨準備高は巨額ではありますが、無限ではありません。
売ることができるドルにも限りがあり、仮に外貨準備高が大きく減ることがあると、日本政府への信用を失い、さらなる円売りにつながってしまうため無限に続けることはできません。
Q.「為替介入」に効果はあるの?
A.9月22日におこなわれた24年ぶりとなる介入は、2.8兆円という円買いの介入としては過去最大の規模でした。
ところが、三週間後には元の水準に戻っています。
市場関係者からは、「一時的に投機的な勢いを抑える効果はあるものの、円安が進む大きな要因となっているアメリカとの金利差が大きいという問題が解決されない限り、 効果は限定的でかつ短期的」との声も聞かれます。