×

コンビニは社会インフラ 買収提案を受けるセブン&アイの行方は…

2024年12月31日 17:00
コンビニは社会インフラ 買収提案を受けるセブン&アイの行方は…
セブン&アイ・HD 看板

2024年元日に発生した能登半島地震からおよそ1年。コンビニ各社は防災・減災への取り組みを強化している。一方、セブン&アイは外資から買収提案を受ける中、経営の見直しを行っている。われわれの社会インフラでもあるコンビニ。セブンイレブンの行方は?

●遠隔で停電、断水把握も…コンビニ各社の防災・減災への取り組み

2024年元日の能登半島地震発生から1年。台風、大雨による自然災害なども相次ぐ中、コンビニ各社はそれぞれ防災・減災への取り組みを行っている。

セブンイレブンの災害対策システムを手がける西村出氏はこう話す。「コンビニは社会的なインフラであるというのは、災害のときに本当に言われる。実際に何かあったときに、そこに電気がついていて、安心できる存在というのは、被災地にとってとても大きなものだと思う」(セブン-イレブン・ジャパン執行役員 システム本部長 西村出氏)

セブンイレブンは、2015年から地震や台風などの災害の際、店舗や物流の状況をリアルタイムで「見える化」する社内のシステム「セブンVIEW」を構築している。全国およそ2万1000店舗の状況が、Googleマップ上にアイコンで表示され、店舗への送電状況やコーヒーマシンへの給水状況などから「停電」や「断水」を判断。配送トラックの位置情報から「物流」の状況を把握。店舗システムなどと連動し、リアルタイムの「在庫」も把握することができる。店舗がどのような状況か瞬時に把握できることは、早急な復旧で地域住民や災害救助者の食料や生活用品、トイレなど社会インフラとして役立つことや、従業員を災害から守ることにつながっているという。今後も自治体などとの連携を拡大していき、より迅速な災害対応に役立てたいとしている。

一方、ローソンは、9月から経営に携わっているKDDIと共に、店舗へのドローン設置を進めている。12月には石川県でローソン店舗からドローンを飛行させる実証を行った。店舗をドローンの基地として使い、災害が起きたときに救助者の捜索などに活用したいとしている。

ファミリーマートでは、全国のおよそ1万店舗に設置されているデジタルサイネージ「FamilyMartVision」を活用。2024年7月には大塚製薬や東京都、大阪府など30都府県と協力し都道府県ごとの熱中症対策啓発動画を放映。8月に台風10号が発生した際には、停電、災害に対する備蓄の呼びかけなどを行った。

●買収提案受けるセブン&アイ・HD

このように、社会インフラでもある日本のコンビニだが、「セブン-イレブン・ジャパン」の親会社、セブン&アイ・ホールディングスは、大きな転換点を迎えている。

◇外資による買収提案
2024年8月、カナダを中心に展開するコンビニ大手「アリマンタシォン・クシュタール」社から6兆円弱規模の買収提案を受け、社外取締役のみで構成する特別委員会を立ち上げた。9月にはクシュタール社に対し、「株主価値向上について、著しく過小評価している」「セブンの株主や関係者にとって、最善の利益となる提案ではないと判断した」などとする書簡を送っている。クシュタール社は「買収資金には自信があり、資金のことは交渉に応じない理由にならない」などと応酬。10月には買収金額をおよそ7兆円まで引き上げた。

◇セブン側の動き
一方、セブン側では、創業家を中心とする経営陣らによる自社買収=MBOが検討されている。メガバンクなどから出資を得る方向で検討していて、出資者には伊藤忠商事の名前も挙がっている。

セブン&アイの特別委員会委員長兼取締役会議長であるスティーブン・ヘイズ・デイカス氏は、「全ての選択肢を客観的に検討」しているとコメントしている。

買収騒動の行方はどうなるのか?

小売業界に詳しいSBI証券シニアアナリスト田中俊氏は、「現時点では創業家によるMBOが一番実現可能性がある」と見る。(1)比較的穏便に進みやすい(2)資金面はかなり大変だが、すでに名前が出ている会社(伊藤忠商事など)も含めて、出資する企業がありそうだ、というのが理由だ。ただ、多額な資金が必要となるため、他の事業の売却や「アメリカのセブン-イレブン・インクだけクシュタールに売却する」など、選択肢はいろいろあるとしている。

***

毎日の食品や生活品の販売だけでなく、公共料金の支払いや荷物の配送、災害時の支援など「社会インフラ」の役割を果たす日本のコンビニ。セブン&アイを悩ませている問題の結末は、国民生活に影響を及ぼす可能性もある。日本の小売りをリードする企業であるセブン&アイの結論には重大な関心が集まる。

最終更新日:2024年12月31日 17:00