バナナが服に? 廃棄減らし資源活用…「環境への負荷軽減」へ “伝統の技”で洋服に新たな価値も
東京・港区にある繊維会社では、これまで大量に廃棄されてきたバナナの茎から、糸を作ることに成功しました。“要らなくなったもの”を生かす取り組みは、アパレルブランドの「H&M」でも行われていて、不要な衣類などを回収し再利用しています。ファッションから、環境への負荷の軽減を進める企業を取材しました。
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東京・港区にある、繊維を扱う会社「MNインターファッション株式会社」には、注目されている製品があります。
MNインターファッション・企画開発部・商品開発課 笠井克己さん
「こちら、すべてバナナの茎の繊維を使った製品になります」
なんと、バナナの茎の糸です。Tシャツやデニムなど、すべてにバナナの茎が使われています。バナナの茎を使った背景には――
笠井さん
「『約1.5億トンくらい食べられてる』といわれてるけど、廃棄されてる(茎の)量は、約10億トンほどあると」
バナナは、1度収穫すると実をつけなくなるといいます。収穫後、新しい芽を育てるため茎は伐採され、そのほとんどが廃棄されています。放置すると、腐敗し土壌の汚染につながり、燃やしても二酸化炭素が発生することから、深刻な環境問題になっているといいます。
これまで大量に廃棄されてきたバナナの茎ですが、MNインターファッションではバナナの茎から取り出せる繊維に着目し、綿と組み合わせて糸を作ることに成功しました。
笠井さん
「これは、バナナの茎を1枚、1枚剥がした皮になります」
この糸を使うことで、バナナの茎は洋服などに“変身”することができます。その着心地は、麻のように軽くて、さらさらとした質感だということです。
現在は、一般向けの商品を企画していて、早ければ今年の夏ごろには、私たちも手にとることができるといいます。
笠井さん
「近い将来、もう少し使いやすい価格帯の商品が出せれば、それだけ(廃棄される)茎の量も減る。少しでも環境に貢献できればと」
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“要らなくなったもの”を生かす取り組みは、アパレルブランドの「H&M」でも行われていました。
新宿店を訪れたお客さんは――
自営業
「子どものパジャマとか、ぼろぼろなんですけどジーンズ。そのまま捨てるんだったら、誰か、どこかに使っていただければ」
「H&M」では、不要になった衣類などを回収し、再利用しています。
世界で廃棄される衣類などは、年間約9200万トンにのぼり、8年後には、さらに約5700万トンが増えると予測されているのです。ファッション産業は、世界で第2位の汚染産業といわれるほど、環境面での負荷が大きいといわれています。
H&Mは「すでにある資源を最大限活用すること」を目指しています。これまで、海外で行っていた衣類の仕分け作業を、この春からは国内に切り替え、輸送にかかる環境への負荷の軽減などをすすめています。
H&M・広報 田中都さん
「ぜひ一緒に、サステナブルなファッションの未来を築いていきたいなと」
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京都では、伝統の技で“洋服を生まれ変わらせる”取り組みが行われていました。
京都紋付・代表取締役社長 荒川徹さん
「我々の特色である“黒を極める”という、この技術を使って、アップサイクル(創造的再利用)するという事業を行っております」
要らなくなった洋服などを黒く染めることで、洋服に新たな価値を生み出すというのです。環境に配慮した染料などを自社で調合し、紋付や洋服などを黒く染めています。「100年以上、黒紋付を染め続けてきた歴史ある黒染めの技術を後世につなぐ」という思いも込めてはじめました。
毎日、黒染めの注文は全国から入ります。スタッフの服を特別に染めてもらうことにしました。
荒川さん
「商品これですか」
スタッフ
「首とか汚れとか黄ばみが気になっていて」
襟の黄ばみや袖の汚れが目立つデニムジャケットは、いったい、どう生まれ変わるのでしょうか。
100年以上続く”伝統の技”で洋服を生まれ変わらせる取り組み。染めの工程は、染料の調合からはじまります。使われるのは独自調合されたもので、これにも環境に配慮した染料が使われているといいます。洋服と染料を機械に入れ、約4時間後、染め上がった洋服は脱水機にかけ、その後、室内干しします。すると、あの黄ばみや汚れがあったデニムジャケットは、漆黒のデニムジャケットに生まれ変わりました。
天然繊維の綿でできたデニムの生地は、すべて黒く染まり別物の仕上がりになりました。洋服に使われている繊維の種類によって、1つ、1つの染め上がりが異なり、その服“オリジナルの黒”になるといいます。
荒川さんは、「『クリーニングで落ちない汚れは、黒染めで再生する』という概念を世の中に作る。廃棄衣類の削減を行っていきたい」と話しました。