「和式」多い学校トイレ 保育園では“訓練”も… 最新式は男子“個室” 性的マイノリティーへの対応も
学校のトイレが子供たちの“カルチャーショック”になっている!? いまだ4割が「和式」の学校トイレ。そのウラで行われている“訓練”とは? また最新の学校トイレは、男子の“あの問題”も解決! さらに性的マイノリティーにも配慮した、誰がどこに入ったかわからないトイレも――。
「はっけよーい、のこった!」「がんばれ、がんばれ」――しゃがんだ姿勢で行う手押し相撲。倒れないように両足でしっかり踏ん張りながら熱戦を繰り広げたのは、大阪市の保育園「GreenHouse新大阪園」の年長クラスと、1つ下の4歳児クラスの子供たちだ。
実はこれ、小学校への入学を前にした「トイレに行く」ための訓練。文科省が2020年に行った調査によると、公立の小中学校のトイレは約4割が「和式」。地域や学校によっては、ほぼすべてが和式というケースもある。
家庭や商業施設などで洋式が普及した今、小学校で初めて和式を使うという子供も多いため、就学を控えた年長クラスの子供たちに使い方を教えているのだという。
冒頭の手押し相撲は、しゃがんだ姿勢で力を入れるための練習。このほかにも、世界各地のトイレ事情やトイレの使い方が描かれた絵本を読んだり、段ボールで作った和式便器の模型を使ったりして、衣服の着脱、足の位置、水の流し方などを練習する。
絵本「がっこうでトイレにいけるかな?」(ほるぷ出版)の著者で常磐短期大学の村上八千世准教授は、「学校の和式トイレにカルチャーショックを受ける子供も多いようだ。座り方がわからず『金隠し』部分に腰掛けてしまったり、トイレに行けず校舎の裏で用を足してしまった、などという話も聞く」と話し、就学前の“トイレトレーニング”を勧めている。
■学校のトイレは「5K」
臭い・汚い・怖い・暗い・壊れている―改修の進まない学校のトイレは「5K」とやゆされることも。慣れない和式を敬遠し、帰宅するまでトイレに行くのを我慢する子供もいるという。排せつを我慢することで腹痛になったり、トイレに行かなくて済むよう給食を食べなくなったりなど、問題も明らかになっている。
家庭の洋式トイレ普及率が99%を超える(TOTO推計)いま、学校のトイレはなぜ昔ながらの和式が多いのか。この疑問については、2022年10月に日本テレビの調査報道特番「Question! みんなのギモン」で放送した。
公立学校は自治体の予算内で設備を整えているため、耐震化やエアコン設置など“命に関わる設備”へ優先的に予算が回され、古くても使用可能なトイレの改修は後回しになってきたという経緯があるというのだ。
(さらに詳しく→【調査報道】学校のトイレ「和式」が“健在”の理由とは?#みんなのギモン
ただ、学校は災害が起きた際、避難所になり得る施設であり、高齢者など身体的に和式の使用が困難なケースも想定される。
トイレは“命に関わる設備”であるとの認識が高まり、国も改修に補助金を出すなど、洋式化が加速しつつある。
■男子も「個室」
遅ればせながら洋式化が進み始めた学校トイレ。せっかく改修するならと、単に便器を交換するだけでなく、衛生面やバリアフリーに配慮した“最新型”も登場している。
佐賀県鳥栖市では、男子用トイレの小便器をなくし、すべてを「洋式の個室」に変えた。一般的に男子は個室に入ると「大」をしていることが周囲にわかってしまう。鳥栖市でも改修前は「恥ずかしいから」と我慢する子が多かったというが、個室化後はトイレの我慢で体調を崩す子が減ったという。
また、愛知県豊川市の小学校のトイレは、男女の区別がない。入り口は1つで、中はすべて個室。女子用、男子用、男女共用、車いす用などがあり、誰がどの個室に入ったかわかりにくい構造になっている。どのトイレを選ぶかは子供の自由だ。
性的マイノリティーの子供にも配慮したものだが、子供たちは「家ではパパもママも同じトイレだから」と、特段意識することもないという。
■“最重要課題”
普段、あまりその存在を意識しないトイレ。でも、果てしない渋滞にはまってしまった時、レジャーなどで一日中、屋外で過ごす時、あってほしくはないが災害が起きた時…トイレは“最重要課題”の1つだ。人は一生で20万回、トイレに行くという。もっとオープンに、時には真剣に、トイレについて考えてみては――。