ナゼいま開催? 8年ぶりの「政労使会議」 …その目的と話し合われたこととは?
「成長と分配の好循環の実現のための転換点が、この春の賃金交渉」
岸田総理は15日、2015年4月以来およそ8年ぶりの開催となる政労使の意見交換、いわゆる「政労使会議」で、このように話しました。物価が高騰するなか、それに“負けない”賃上げを実現できるかどうかが、差し迫った課題となっています。
■そもそも「政労使会議」とは?
政労使とは、
・政府の「政」
・労働者の「労」
・使用者(=会社)の「使」…を合わせた単語です。
・総理大臣や関係閣僚
・労働組合の中心組織である「連合」
・代表的企業が集まる「経団連」
など、それぞれのトップが総理官邸に集まり、意見交換する会議が「政労使会議」です。
この時期、労働組合が賃上げなどを要求する「春闘(=春季闘争)」で、会社側の回答が集中する今年の「集中回答日」は3月15日。この日にあわせて「政労使会議」を開催することで、中小企業の賃上げを進めるための“起爆剤”とする狙いがありました。内閣府の関係者は「賃上げの流れを中小企業、地方の企業に波及させていくことが重要」だと、その意義を強調します。
■ナゼいま中小企業の「賃上げ」が重要?
その背景にあるのが、歴史的な物価上昇です。物価の上昇に見合う賃上げが実現できなければ消費が冷え込み、日本全体の景気が悪化する懸念があります。
今年はトヨタ自動車、ホンダ、三菱自動車などが、集中回答日を待たず、「満額回答」を打ち出すなど、大企業が続々と賃上げを発表しました。しかし、日本企業の7割を占めているのは中小企業。今回の政労使会議では、大企業が打ち出した賃上げの流れを“中小企業に波及させる必要がある”との認識を、改めて共有しました。また、そのためには人件費の価格への転嫁が必要だとしたほか、最低賃金の全国平均を1000円に引き上げるとの目標が示されました。
内閣官房の幹部は「“価格転嫁をすると消費者が離れていく”という意識が、日本は強すぎる。価格転嫁をして、給料をあげて…という海外では当然の流れが、日本では起きていない」「価格は“上がるもの”という風に、意識を変えていかなければいけない」と話しています。
■各団体トップのメッセージは?
会議後、労使のトップは記者団に対し以下のように話しました。
▼経団連・十倉会長
「今日の集中回答日では、非常に勇気づけられるいい出だし。ただ、物価に負けない賃上げを持続的・構造的にしていくためには、やはり原資の問題が必要」
▼連合・芳野会長
「連合としては、賃上げは今年のターニングポイントと位置づけ。価格転嫁を政府にも経営者の皆さんにも、しっかりとやっていただきたい」
◇
中小企業を含め、「物価に負けない賃上げ」を実現できるのか。この数週間が、今後の日本経済の行く末を決める“正念場”となります。