知的障害のある作家が描く“異彩”アート 秘めた魅力と新たな可能性
「作家は支援する相手ではなく、大切なビジネスパートナー」
知的障害のある作家と契約してアート作品の企画・商品化を行っている企業「ヘラルボニー」。障害があるからこそ、強烈なこだわりを持って生み出される“異彩な”アート作品の魅力と新たな福祉の可能性を石川アナウンサーが取材しました。
まず石川アナが訪れたのは東京都中央区の東京ミッドタウン八重洲。ここには色鮮やかなリゾートカクテルや、数え切れないほどの列車などが描かれた絵画が飾られています。
描いたのは主に知的障害のある作家たち。こうした作品を企画・商品化しているのが、岩手県発のブランド「ヘラルボニー」です。おもに知的障害がある作家と契約しており、その数は153人にのぼります。
作品の魅力は独自の視点で描かれる“独創的な世界観”。
ヘラルボニー代表取締役Co-CEO松田崇弥さん
「繰り返しの表現がおもしろんですよね。たとえば私の着ているこのシャツとかは、ボールペンでひたすら黒い丸を塗るっていうのが好きな作家さん」
知的障害がある人や自閉症の人に多くみられる「同じことを繰り返す」という動作が、唯一無二の作品を作り上げているといいます。
ヘラルボニーはマーカーをハンコのように何度も押しつけて描く作家や、クレヨンをひたすら「塗っては削る」作家など、独自のこだわりを作品として表現している作家と多く契約しています。
ブランドを立ち上げたのは双子の松田崇弥さんと文登さん。そのきっかけは自閉症で重度の知的障害がある2人の兄・翔太さんの存在でした。“知的障害のイメージを変えたい”と考える中で出会ったのが、障害のある人たちが生み出すアート作品だったといいます。
ヘラルボニー代表取締役Co-CEO松田崇弥さん
「単純にかっこいいんだから、かっこいい状態で世に出ていくっていう非常にシンプルなことができたら、ちゃんとこの経済に乗っていくようなことってあり得るんじゃないかなと」
「作家は支援する相手ではなく、大切なビジネスパートナー」
作家とライセンス契約を結び、売り上げに応じて使用料を支払っています。
作家自身の収入が増えることで、ある出来事も…。
ヘラルボニー代表取締役Co-CEO松田崇弥さん
「本当に確定申告をする作家さんが出てきて、どんどん年収もあがってて」
「息子さんに初めて焼き肉をご馳走になりましたとか」
身近な人が喜んだり褒めてくれることは作家たちにとって日々の潤いになっているといいます。
多くの商品や企画を手がけているヘラルボニー。今月販売される新商品の会議に立ち会わせてもらいました。
販売されるのはアートがプリントされたハンカチでバラをラッピングするという特別なギフトセット「1輪ハンカチラッピング×AFRIKA ROSE」です。商品に使われる作品を描いた森啓輔さんもリモートで出席しました。
ヘラルボニー担当者
「ハンカチのアートに合うバラを選んでいただいて。この組み合わせで販売します」
森さんは油絵独特の色彩が鮮やかな人物を描いており、JALの国際線で提供されるアメニティーグッズなど様々なところに取り入れられています。
石川みなみアナウンサー
「やっぱり色にこだわりがあるんですか?」
森啓輔さん
「はい。色をあわせて一つの色にするんです。それで塗っているんです」
納得がいくまで時間をかけて、一つの色を作っているといいます。
石川みなみアナウンサー
「これから先どんな作品を作っていきたいか教えてください」
森啓輔さん
「人の絵ですよ。レコードジャケットの人ですよ。どれを描こうかな。迷っちゃう」
レコードジャケットを見て、そこから得た着想を基に作品を描いているという森さん。ヘラルボニーと共に1人のアーティストとして活躍の場を広げています。