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【目前】手作りの漬物が消滅の危機? 6月から許可制に 79歳のベテランは販売を断念 県内の漬物製造4461件→許可を取ったのは674件のみ 福岡

2024年5月27日 18:45
【目前】手作りの漬物が消滅の危機? 6月から許可制に 79歳のベテランは販売を断念 県内の漬物製造4461件→許可を取ったのは674件のみ 福岡
法改正で6月から手作り漬物が消滅の危機?

道の駅などに並ぶ手作りの漬物が、まもなく消えてしまうかもしれません。6月1日(土)から漬物製造が許可制になり、“おばあちゃんの味”が今、消滅の危機に直面しています。

5月27日に訪ねたのは、福岡県八女市にある道の駅です。

■石田旭昇アナウンサー
「道の駅たちばなに来ています。漬物コーナーには高菜や梅などがあり、中には手作りと書かれているものもあります。」

今、地元の人たちが作る人気の漬物が危機に直面しています。

■道の駅たちばな・中島世輝さん
「今まで商品を出品していた生産者が出さなくなるので、梅干し・らっきょう・高菜漬けなどの数が極端に減ると思います。」

いったいなぜなのか。それは、2021年に施行された改正食品衛生法で、「漬物製造」が許可制になったためです。

3年間の猶予期間を経て2024年6月1日(今週土曜日)から、許可を得ていない業者や農家は、販売できなくなります。

販売を続けるには、手を触れなくても水が出るセンサー式手洗い場など、衛生状態を保つための設備が求められています。

■中島さん
「生産者は年配の人が多かったので、今から加工場施設を作って今から漬物を出すのは厳しいので、辞める人が半分以上ですね。」

福岡県などによりますと、食品衛生法改正前には、県内の漬物製造の届け出件数が4461件ありましたが、5月22日時点で営業許可をとったのは674件とわずか15パーセントにとどまっています。

この道の駅でも、これまで70軒の生産者が漬物を納品しましたが、6月からはおよそ20軒と激減します。

79歳の中尾英子さんは、道の駅での漬物販売を断念した1人です。

■中尾英子さん
「梅干しとらっきょう。梅干しは去年、らっきょうはことし漬けたものです。」

中尾さんは、自宅で作った漬物を15年前から道の駅で販売しています。大根を干して作る『はりはり漬け』は、あっという間に完売するほど人気でした。

■石田アナウンサー
「しゃきしゃきの食感がおいしいですね。味も染み込んで、かめばかむほどうまみが出てきます。あばあちゃんの味。」

79歳のベテランは販売を断念

手間ひまかけて作る漬物を喜んで食べてくれることが生きがいだったという中尾さん。しかし、漬物製造を続けるための新たな設備を導入する費用が高く、また年齢のことも考え廃業を決めました。

現在は自宅用などで少量だけ漬けています。

「少しだけど収入があるし、知り合いは増えるし、楽しかったですね。残念です。」

糸島市にある産直市場でも、これまで40人ほどいた生産者が6月からは半分ほどに減ります。

■伊都菜彩・波多江和也 店長
「昔ながらの味がなくなるのはさみしい気持ち。今まで通り(漬物を)出していただければという思いでいるが、なかなかそうはいかない。」

そうしたなかで、続ける選択をした人もいます。柴田絹代さん、69歳です。

たくあんのぬか漬けや、高菜漬けを作っていて、50年以上にわたって受け継がれてきた漬物は、柴田家自慢の味です。

■漬物生産者・柴田絹代さん
(Q.来月以降どうする?)
「保健所の許可も得ましたので、まだ続けていこうかなと思っている。生活しないといけないでしょ。できる範囲で続けたい。」

営業許可を得るために1層式のシンクから2層式に改装し、食材を扱うものと食器や手を洗うもので使い分けるように変えました。

また、水道もセンサー式に改装しました。

■柴田さん
「やっぱりお漬物しかないかなと思って。もうこれしかない。やっていこうと思うしかないよね。」

おばあちゃんの味として親しまれてきた手作りの漬物。伝統を途絶えさせないための支援策が今、求められます。

福岡県内の漬物製造についてまとめました。

漬物を製造していることを届け出ているのは4461件。そのうち、営業許可を取っているのは、わずか674件となっています。

漬物を製造する生産者が減少する中、漬物文化を絶やさないために、支援に乗り出したところもあります。

まずは福岡県です。4月から農家がグループで製造し、共同で設備を使う場合は、設備投資に最大で150万円の補助金を支給しています。

これまでのところ10件以上の利用希望があり、現在、要件を満たすかどうか確認中だということです。

また、筑前町にある直売所「ファーマーズマーケットみなみの里」では、直売所のスタッフが漬物を作っている高齢者の相談にのり、必要な設備を紹介するなどの取り組みをしています。必要な場合は行政への提出書類の作成をサポートするということです。

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