【全国初】深刻な運転手不足 熊本のバス会社が導入「選べる賃金制度」とは
物流・運送業界で課題となっている「2024年問題」。トラックドライバー不足が懸念されていますが、実は路線バスも「運転手不足」に頭を抱えています。そうした課題を解決するため、熊本のバスグループが導入したのが、業界初となる「選べる賃金制度」。その背景を取材しました。
通院や買い物、日常生活に欠かせない路線バス。現在、深刻な運転手不足に陥っています。熊本県内で路線バスなどを運行する産交バスグループ。運転手の人数は643人(10月1日現在)で、5年前と比べると約70人減少しました。(2018年・710人)
バスの運転に必要な大型二種免許の取得に普通自動車などの免許取得後、3年以上経過が条件であることなどから、バス運転手は40代の中途入社が多いということです。しかし、拘束時間が長いなどの理由で募集をかけても応募する人が少なく、そもそも運転免許を持っていない人が増えています。
こうした運転手不足を解消するために導入したのが。
■九州産交バス 園部元弘管理課長
「少しでも魅力的な賃金に上げたいなということで、今回新しい退職金を希望するか、しないかを選択する制度を設けた」
つまり「退職金あり」か「退職金なし」かを選べる賃金制度です。九州産交バスによりますと、国内の業界では初の取り組みだといいます。
例えば「退職金なし」を選択すると、39歳までは1万5000円、40歳から59歳までは2万5000円あ毎月の給与に上乗せされます。
40代が多い運転手の中途採用。仮に40歳で入社し、「退職金なし」を選択した場合、年間30万円手取りが増えます。
■九州産交バス 園部元弘管理課長
「40代の方は家族持ちの方が多いので、月々の収入も考えながら、退職金を希望せずに月額を中心に取りたいとか、自由な選択ができるというのが大きな魅力。公共交通機関を担っている企業なので、運転手がいないと事業が成り立たない。少しでも運転手が入ってくることによって、既存の運転手の労務環境も改善できるといい」
【スタジオ解説】
九州産交バスグループでは、人材確保を目的に、選べる賃金制度のほかに、スタート入社時の支度金を10万円から25万円に増加、年間の休日の数を84日から104日に増やしました。
バスの運転手不足は全国的に深刻で、待遇改善が求められる職種です。ただ路線バスの運転手は、給料を増やそうと思ってもタクシーやトラックのように沢山運転して手取りを増やす訳にはいきません。つまり、勤続年数を上げる、基本給が高い会社に入るの2つしか選択肢がありません。そのため、勤続年数が短いドライバーにはこうした裏ワザ的な「退職金を前払い」が効果的あるかもしれません。
また、大型二種免許の取得条件が去年緩和され、特別な教習を受ければ19歳以上で普通免許を1年以上持っていれば受験可能になりました。若い世代の増加が期待されます。