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東京大学が授業料引き上げへ 富山大学は?

2024年9月11日 19:36
東京大学が授業料引き上げへ 富山大学は?

東京大学は10日、2025年度からの年間の授業料をおよそ10万円引き上げると発表しました。

全国の国立大学では、授業料を引き上げるかどうかが問題になっています。

富山大学は今後どうするのか、その背景を含めて、齋藤学長に聞きました。

東京大学は2025年度の学部入学者から、年間の授業料を現在の53万5800円から64万2960円に引き上げると発表しました。

授業料の引き上げは、20年ぶりです。

富山大学は今後どうするのか。齋藤滋学長です。

富山大学 齋藤滋学長
「今すぐ授業料を上げるということを決めたわけではありません。こういった状況がもう1年2年続きますと経済的には成り立たない状況になってきますので(授業料の引き上げも)考えざるをえない状況かなと思う」

齋藤学長は富山大学の授業料をすぐに引き上げる考えはないと断言しつつも、今後、検討する可能性を示唆しました。

理由は、赤字になりかねないほどの厳しい財政状況にあります。

富山大学の授業料は、現在の東京大学と同じで、年間53万5800円。

これは文部科学省の省令に定める標準額で、各大学で最大20%まで引き上げることができます。

富山大学の主な収入は、附属病院収入を除くとおよそ253億円。

半分が国からの「運営費交付金」で続いて、授業料や入学料、さらに、共同研究や補助金などが続きます。

厳しい財政状況の要因の一つは、国からの「運営費交付金」が減少していることです。

国立大学全体でみると、法人化した2004年以降、減り続けています。

富山大学でも当初は145億円余りありましたが、2022年度は127億円余りに減りました。

富山大学 齋藤学長
「バブルが弾けたことが大きなこと。いろんなカタチで経済を広げすぎたので、もっと縮小すべきということで毎年1%ずつ運営費交付金が削られた」

この間、消費税率は2回上がり、近年は物価も高騰。さらにー。

齋藤学長
「(先月)人事院勧告が出まして、今年の給料を大幅に上げるようにと、今年だけで人件費が3・2億円上がってくる。光熱費は非常に上がっていて従来と比べて約2・4億円上がっている。これ以上人件費が上がると、大学の運営自身が本当に維持できないというレベルに来ている」

こうした厳しい財政状況に、富山大学などでつくる国立大学協会は2024年6月、「もう限界」だとして声明を発表。優秀な人材の確保が困難となり、教育、研究の質が低下するおそれがあるなどと訴えています。

齋藤学長は、運営費交付金が減額されてきた「弊害」を指摘します。

齋藤学長
「いわゆる科学立国であった日本が、どんどん落ち込んでいったっていうのはまさにその結果。教育という一番大事なところを削ってしまったツケが今になって出てきている。教育にはお金がかかる。研究にもお金がかかる。それは未来への投資ですよね。今どんどん世の中変わってきているので新しい教育をしていかないといけない。教授を養成したりとか、公募して採用したりするときに人件費がかかってきます。なのに国からの支援が減ってるということは私自身からすると、かなり疑問です」

富山大学は、独自の収入を増やすために共同研究や補助金などの「外部資金収入」を増やすことに力を入れてきました。

齋藤学長
「富山といったら二つの産業、二大産業がある。アルミと薬ですよね。どちらもやっぱり共同研究を進めている。アルミは高岡キャンパスにセンターを作りましたので本当全国のいろんな企業から引き合いがある。もう一つは薬の富山、創薬富山の事業。県内の製薬企業と連携させていただき、新しい薬剤を開発したりとか、新しい使用目的のためにお薬を開発したりとか」

そのほかにも、学生会館のラウンジやホール、図書館のフロアに企業名を盛り込むネーミングライツで収入を得ているほか、節電に努めるなどの地道な取り組みにも力を入れています。

東京大学は10日、2025年度からの授業料の引き上げを発表した一方、授業料全額免除の対象を、世帯年収400万円以下から世帯年収600万円以下へと広げる方針を示しました。

齋藤学長は、富山大学で今後もし授業料を引き上げる場合には、経済的困難を抱える学生への配慮が不可欠だと強調します。

齋藤学長
「勉強したい人を経済的な理由で拒絶はしたくない。もし上げざるを得ない場合には、いろんな奨学金も含めた形で貧困層が大学に進学できないということはそういうことがないような形でしたいと思う」

そして、あらためて国として人材を育成、輩出する大学への投資を訴えました。

齋藤学長
「今がラストチャンスだと思う。これでちゃんと軌道修正できなければどんどん日本の国力が落ちてくる一方だと思ってます」

学費の値上げで進学を諦める人が増えれば、社会にとっても大きな損失となります。政府には若者が安心して学べる環境整備を求めたいと思います。

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