【新幹線開業10年】ビジネスの変化 富山に拠点も
本社機能を黒部に移したYKKグループ 新幹線の恩恵は
きのう黒部市で開かれた「パッシブタウン」第5街区の内覧会。YKKグループが2013年から手掛けてきた、自然エネルギーや再生可能エネルギーを活かしたまちづくりの集大成です。
最後の街区となる第5街区には、北陸初となる木造高層集合住宅3棟を建設。使用する木材の87パーセントを県内で調達し、建設時の二酸化炭素排出量を通常のおよそ半分に削減。1棟には水素エネルギー供給システムを日本の集合住宅として初めて導入しました。
YKK不動産 志水宏朗社長「この10年間で、黒部の中でなかなか見かけない街並みができたなということで、いろんな方に集まっていただければなと思っています」
パッシブタウンの構想が打ち出されたのは2013年。東日本大震災を受け、リスク分散の観点から、YKKグループは本社機能の一部を黒部市に移転することも発表しました。
その後押しとなったのが、北陸新幹線の開業でした。
YKKグループ 吉田忠裕会長(当時)「我々の会社だけの移住でも、かなり大きなインパクトが地域にあると思います」
北陸新幹線の開業前から現在にかけて、県内に本社機能や研究開発拠点を移転・拡充する企業が相次ぎました。
北陸経済研究所によりますと、1都3県の首都圏に本社を置く企業の富山県内の事業所は、2014年から2021年の7年間で773事業所が増加。従業者数も1万5900人増えました。
なかでも製造業の増加が顕著で、北陸新幹線の開業によって企業が県内に進出し、産業の活性化が進んだと考えられます。
YKKグループは去年3月末時点で、国内従業員のおよそ45パーセントにあたる8300人が県内で働いています。北陸新幹線がもたらした恩恵は大きいと話します。
去年11月にオープンした「YKKAP技術館」です。建材事業発祥の地である築65年の工場の建物を、展示施設に改修しました。
YKKAP 飯村千恵 渉外課長「我々YKKAPの今までの歩みだったりとか、ものづくりに対する姿勢、思い、精神を紹介した技術館となっております」
一般の人も見学できますが、取引先の視察を受け入れることもあるということです。
飯村千恵 渉外課長「営業が自分たちのお客様を視察に連れてくるのですけれど、今まで一泊で来ていただいたりとかしなければいけなかったのが、日帰りで来ていただけるようになったのが、お客様の時間的な負担が少なく来ていただけるというのが、非常にありがたいというふうに思っています」
東京から黒部まで乗り換えなしで最短2時間20分で移動できるようになり、視察の提案がしやすくなったほか、YKKAPの社員も出張がしやすくなったといいます。
沿線企業として望むのは「大阪延伸」
関東方面とのビジネスでの往来が活発化する一方で、沿線の企業として待ち望んでいるのが、大阪までの延伸です。
飯村千恵 渉外課長「関東方面のお客様は非常に来ていただきやすい状況になったんですけど、やはり西の方からのお客様もたくさんいらっしゃるんですけど、そこはまだちょっと乗り継ぎがあったり時間かかったりということなので、早く大阪までつながるようになってほしい」
一方、去年の敦賀延伸により企業の進出は今後も見込まれます。
地域の経済発展には、人口増加や現地採用につながるような企業誘致が重要です。
北陸3県を1つの経済圏としてPRし、広域的な企業誘致を進めることも求められます。