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大学が消えるマチ 突然の移転発表 「想像つかない」困惑する町民 経済にも影響

2023年11月3日 13:00
大学が消えるマチ 突然の移転発表 「想像つかない」困惑する町民 経済にも影響
大学が消えるマチ

北海道医療大学の移転が発表されてから1か月余り。

大学生がまちづくりに関わってきた当別町にとって影響は計り知れません。

学生とともに歩んできたマチのいまを取材しました。

小さな町に衝撃 突然の大学移転発表

当別町でそば店を経営する鶴野信幸さんです。

昼どきの客が多い時間帯は、学生アルバイトが欠かせません。

そんな鶴野さんの頭を悩ませる出来事が起きました。

(そば処福住 鶴野信幸さん)「ちょっと想像つかなかったな。いるもんだと思っているからね。なんともわからないですね」

田園風景が広がる当別町。

石狩平野の一部という恵まれた土地条件を生かし、農業が基幹産業として発展してきました。

そして、発展の追い風となったのが北海道医療大学の存在です。

前身の東日本学園大学が音別町にあったキャンパスを廃止して当別に移転してきたのは1985年。

学生数はおよそ3500人。

大学は50年近くまちづくりの一翼を担ってきましたが…

(東日本学園 北海道医療大学 鈴木英二理事長)「ボールパークに新たにキャンパスを設置することとなりました」

10月10日。

北広島市やFビレッジとともに開いた記者会見で、北海道医療大学は2028年4月を目標に、全ての学部と病院などをボールパークに移転すると発表しました。

移転の理由として大学は、学生の確保にむけた利便性の向上を挙げています。

(東日本学園 北海道医療大学 鈴木英二理事長)「心躍るものがあります」

(北広島市民)「北広島市はまだまだ伸びるところだと思うし、若い人が集まるのは悪いことではないと思います」

まちづくりを支えてきた大学

学園都市線の終点・北海道医療大学駅です。

朝、列車が到着するたびに多くの学生が駅に降り立ち大学へと向かいます。

当別町と深い関わりをもってきた大学。

地域社会をともに築き上げてきました。

(当別町 後藤正洋町長)「まちづくりの柱に大学があった。全く(大学が)なくなると抜本的に変えなければならない」

そんな当別のマチにあるそば店。

30年以上、学生アルバイトとともに歩んできました。

現在も4人の医療大生が店で働いています。

(医療大生)「実家が神奈川なんですけど、簡単に休みがもらえて、それがよくて」

(医療大生)「雨が降っているときとか冬の期間は、店長が家からここまで送迎してくれる。とくに町のみなさん優しいので」

大学にある地域貢献団体サークルも、当別を「人のつながりであふれる地域」にしようと、毎週一人暮らしの高齢者宅を訪問するなどして交流を続けてきました。

また、ほかのサークルのメンバーも子どもたちと交流するイベントを企画してきました。

学生とともに歩んできたマチ。

(医療大生)「町民のセミナーに大学から参加したり、学生代表として参加したり、町民のみなさんと話す機会はたくさんあった。親と離れていても誰かが助けてくれるので、すごく過ごしやすかったです」

そのなか、移転の話は突然伝わってきました。

(そば処福住 鶴野信幸さん)「私のところもそうだけど、当別町にとっても痛手ですよね」

大学の移転はマチの活気を失うだけでなく、経済的なダメージにもつながります。

(当別町民)「学生の寮がたくさんあるので、アパート業界の方も大変だと思います。すごい過疎化が進んでしまうと思って心配です」

学生が入居しているマンションやアパートです。

当別町の10代20代の人口はおよそ2500人。

そのうち実に650人が医療大生です。

アパートの経営者でつくる組合は、大学の移転で年間4億円の損失になるとしています。

また、当別駅前には学生マンションや図書館などの公共施設が入る複合ビルの建設が予定されていましたが、移転を受けて計画はいったん見直すことになりました。

大学移転で活気を失ったマチも

マチから大学が消える。

過去に、大学の移転で影響を受けてしまったマチがあります。

小樽市桂岡町です。

(近くに住む人)「(昔は)若い子が多かったからすごい活気があった。人がいるってことはいいことだなと思う」

このマチにあったのが北海道薬科大学。

しかし、大学の合併をきっかけに2015年、札幌市手稲区へと移転しました。

桂岡町には多いときに600人以上の学生が住んでいましたが、移転とともにマチを離れていきました。

現在も桂岡町でアパートを経営している小原義一さんです。

大学移転までの間、持っているアパート6棟は全て学生が住んでいたといいます。

しかし、大学の移転で学生は一気に退去。

現在は民宿や一般向けとして経営を続けていますが、影響はとても大きかったといいます。

(百瀬記者)「(移転後の)市の対応は?」

(アパート経営者 小原義一さん)「一切ないです。それぞれで対応していくしかないと。同じく学生向けのアパートやマンションを経営する人は、みなさんもう手放しています」

一般向けに部屋を広げるため、改装などに3000万円以上の費用がかかったといいます。

(アパート経営者 小原義一さん)「移転が決まってからかな、1LDKにしたのは。もう1Rの時代じゃないというので。全部切り替えたんです」

活気から経済的な負担まで。

大学移転でマチの姿は大きく変わってしまいました。

大学移転まで5年 試行錯誤が始まる

医療大の北広島移転まで、あと5年。

残された時間は決して長くありません。

10月から商工会が対策会議を開くなど、マチをどうするかという議論は始まっています。

(商工会会員)「商工会青年部主催のビアガーデン、医療大の生徒に手伝ってもらっているので、イベント等の開催がどうなるのか不安」

(商工会会員)「今後僕らの方でアクションを起こしていけば」

移転による影響を最小限にしたいー

参加したメンバーからは、大学跡地の活用を積極的に提案していかなければならないという声も上がりました。

(当別町アパート組合 辻野浩さん)「あちこち手を付けちゃうような形に見えるかもしれないが、いろんなことをやらざるを得ない。その中で我々にあったやり方を見出していかないといけないと思います」

大学が移転した5年後、当別をどのようなマチにするのか、試行錯誤は始まっています。

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