トップ交代や合併に向けた動き…激動の山形県内地方銀行 「経済」テーマに山形の1年振り返る
ことし1年の山形県内の出来事を振り返る「カメラが見つめたやまがた2024」。19日は、トップの交代や合併に向けた地方銀行の動きなどを中心に県内の「経済」を振り返ります。
小坂憲央アナウンサー「山形銀行本店営業部です。まもなく新紙幣の両替が始まる時間です。多くの方がその時を待っています」
7月ー。20年ぶりに新紙幣の流通が始まりました。デザインが一新された千円札、5千円札、それに1万円札。
訪れた人は「新札はいいですね。ホログラムも精巧にできている」(すぐ使う?)「1週間くらい見てその後、使う」
お金を扱い、県民の暮らしに深く関わっている銀行をめぐってさまざまな〝動き〟が表面化しました。
4月、県内の主要な地銀の1つ、きらやか銀行に衝撃が走りました。
きらやか銀行・川越浩司頭取(当時)「大変ご心配、ご迷惑をおかけしますことを心よりお詫び申し上げます。大変申し訳ございません」
昨年度の決算で、過去最大となる244億円もの赤字を計上したのです。今後10年の取引先の倒産などに備えた「貸倒引当金」のほとんどを前倒しで計上したことが大きな要因でした。
きらやか銀行・川越浩司頭取(当時)「地元の取引先と取引歴が長いという中で、もう少し厳しい対応をしなければならなかった」
業績悪化の影響で、親会社の「じもとホールディングス」が、実質的に国の管理下に入りました。
じもとHDの株主(どこに赤字の原因が?)「きらやか銀行の融資の甘さではないか」「かなり職員のモチベーションが落ちてしまうと思うが、そこを乗り越えてもらえれば」
9月末に迫っていた公的資金200億円の返済期限は13年後まで延期となりました。
きらやか銀行ではトップの川越浩司頭取が引責辞任ー。
「お世話様でございます。よろしくお願い致します」
経営再建を託され就任したのは西塚英樹頭取(53)です。
きらやか銀行・西塚英樹頭取「責任の重さをあらためてひしひしと感じている」
今後は、融資の審査体制の強化や取引先への訪問の徹底などに力を注ぎ、ニーズやリスクへの迅速な対応を図っていく方針です。
きらやか銀行・西塚英樹頭取「人も減っている、時間もないという中で、(私は)『意識と行動を変える』と言っているが、そんな環境の中でも必ずしないといけない」
物価高が続く10月ー。主要食品メーカーによる値上げが2900品目を超えました。
フードセンターたかき・交り江店 村上兵太郎店長「こちらのコーナーがほぼ全て値上げとなる。ここから向こうまでほぼ全て10%から20%の値上げ」
店側は、人気商品の価格を期間限定で据え置くなどの“企業努力”で集客を図ります。
客「生活に必要なものが高くなっている。安い店に行くとか、広告をチェックするとか(対策を取っている)」
物価高に加え、人口減少やニーズの変化ー。
激変する環境の中、地域で親しまれた企業や店が姿を消しました。
創業から144年。山形市中心部の「岩渕茶舗」は、後継者不在などで8月に閉店し、別の企業に事業を譲渡。
長年愛されたお茶の味は、山形市郊外に新たにオープンしたカフェに引き継がれていきます。
事業譲渡を受けたSHUKAN・高橋寛光社長「店(岩渕茶舗)に伺ったときにいただいたお茶が非常においしくて、一緒に仕事ができたら最高だろうと感じた」
岩渕茶舗を営んでいた岩淵正太郎さん「若い人たちにどんどんやってもらい、それが代々つながっていけば一番いいことだと思う」
ものづくりの業界では快挙がー。若手職人が技術を競う「技能五輪」の全国大会で、天童市の家具メーカーに勤務する男性が、大会史上初となる4年連続で最高賞の金賞に輝きました。
天童木工・石橋葵さん(どういったところが採点基準に?)「例えば引き出しの部分は機械加工が禁止なのでどれだけ(手作業で)きれいに作れるか。すき間が空いていると減点されるので、ぴったりになるよう作っている」
山川麻衣子アナウンサー「手作業とは思えないくらいぴったりはまっていますね」
天童木工・石橋葵さん「若い技能士が減ってきているので、そういう人を増やすためにも(技術などを)いろいろと公表して、少しでも家具作りに興味を持ってもらいたい」
銀行には再編の動きがー。
「新銀行名はフィデア銀行です」
フィデアホールディングスの傘下にある鶴岡市の荘内銀行と秋田市の北都銀行が2027年1月1日に合併し、新たに「フィデア銀行」が誕生することになりました。
東北で初の県境をまたいだ銀行合併。メインバンクとする企業は両行合わせて6500社を超え、各県の第1地銀を上回る見込みです。
フィデア銀行頭取に就任予定の佐藤敬北都銀行専務執行役員「我々、地方銀行を取り巻く経営環境は、非常に厳しいと認識しているが、“2つの地元”を持つ広域地方銀行として、地域のお客様から信頼を得られるように、選んでいただけるように、フィデアグループの総力を挙げて全力で取り組んでまいりたい」
「フィデア銀行」の本店は山形市に置く予定です。その準備のため、来年5月、荘内銀行の本店が鶴岡市から山形市に移ります。
県内の主要3銀行すべてが山形市に本店を構えることになります。
山形銀行・佐藤英司頭取「正直申し上げてびっくりしたし、それが脅威ではないかと言われれば、非常に気になるところではあるが、ただ、我々がやることをしっかりやっていくしかない。計画をしっかりと遂行していくことに尽きる」
きらやか銀行・西塚英樹頭取「本店がどこにあろうが、お客様への対応や経営について何かが変わるものはない。我々は我々でやっていく」
新たなトップのもとで再建に向かうきらやか銀行。
「お疲れ様です」
西塚頭取は就任後、各営業店を回り、行員1人1人の声を直接聞くことを重視しています。
行員「(お客様から)『ひんぱんに来てくれて顔も見せてくれるので、そういう安心感があって今回、定期預金を預けた』と言われた。(訪問が)信頼につながっていたと実感した」
西塚頭取「お客様を愚直に訪問すること、それが我々には必要。良い経験、励みになると思うし、それを活かしてほしい。よろしくお願いします」
行員「まだまだ信頼回復が必要だと感じている。窓口に来たお客様1人1人に丁寧な対応をして最適な提案をしていきたい」
きらやか銀行・西塚英樹頭取「前向きに変わってきていると実感している。地域の皆さまに恩返しできるようしっかりやっていきたい」
激動の時代ー。
地域貢献を続けるための地方銀行の戦略が問われています。