×

【3つの提言】「値上げは今年の夏以降に本格化する可能性」値上げラッシュの新年度、さらにマイナス金利解除で金利も上昇…これからの生活に必要な「お金の貯め方・使い方」を経済の専門家が独自解説

2024年4月3日 13:30
【3つの提言】「値上げは今年の夏以降に本格化する可能性」値上げラッシュの新年度、さらにマイナス金利解除で金利も上昇…これからの生活に必要な「お金の貯め方・使い方」を経済の専門家が独自解説
経済評論家 加谷珪一氏

 私たちの生活に重くのしかかる値上げラッシュ。帝国データバンクによると4月以降、値上がりするのは食品だけで2806品目あるといいます。一方で4月からの賃上げやマイナス金利解除など様々な動きが。この先私たちの生活は楽になるのか?さらに苦しくなるのか?今後のお金事情を経済評論家の加谷珪一氏が解説します。

今年の値上げのキーワードは“人件費” 夏以降さらなる値上げの可能性も…

 4月に入って半年ぶりの値上げラッシュです。今回は2800品目を超え、ハムなど加工品や調味料などの食料品以外にも、ティッシュ、トイレットペーパーや電気ガスなども値上げされます。

 今後の見通しとして、原材料の高騰や円安による値上げが、今年の夏以降に本格化する可能性があるということです。さらに人件費の上昇による値上げが発生する可能性もあるといいます。

Q.この4月の値上げは過去の値上げと少し違うようですね?
(経済評論家 加谷珪一氏)
「2022年・2023年の値上げは、原油や小麦などの原材料の高騰など、海外の要因が多かったのですが、今年は“人件費”というのが一つのキーワードになっていて、それをカバーするための値上げというニュアンスが出てきていますので、全部が上がるわけではなく“人件費”がかかる商品・製品については値上げ幅が大きいという状況です」

 “2024年問題”で宅配便も値上げされます。例えばヤマト運輸の場合、関東から中国・四国に運ばれる宅配の料金が180サイズは220円の値上げ200サイズは660円の値上げとなります。佐川急便も平均で7%程度の値上げなどとなっています。この値上げの理由は「原材料コストの増」「賃上げで人件費増」さらに「2024年問題による物流費の増」が理由となっています。その物流の“2024年問題”ですが4月1日からドライバーなどの時間外労働に制限がかかるということで働き手も減ります。野村総研の推計によりますと、今後何も対策をしないと2030年には35%の荷物が運べなくなるということです。

Q.ドライバーの過重労働を避けて、その上で賃金を維持するとなると値上げも止むを得ないということですか?
(加谷氏)
「それに加えて、自動化を進めるにも人手は必要です。このご時世に良い人材を集めるためには賃金を上げて行かなければいけない、という問題もありますので、これが人件費の上昇に繋がっています」

Q. 宅配でも、「取りに行ったら安くなる」とか、「再配達やドライバーの手間になることは割増する」だとか、サービスによって料金に差を付けたら良いという意見もありますが?
(加谷氏)
「あらゆるものが均一な値段のサービスはおかしいんです。メリハリをつけるべきで、コストがかかるものはそれなりの値段で、消費者がどれだけ貢献できるかで値段が変わるというのは、取り組むべき課題だと思います」

 一方、4月から賃金も上がります。3月の発表によりますと平均賃上げ率が5.25%、平均引き上げ額が1万6379円でした。また、年金も厚労省の発表によりますと支給額は2023年度と比べて2.7%上昇とあります。加谷氏は「現時点では物価上昇に追いついていないが、来年再来年と賃上げなどを継続して行けば実質賃金が追い付いてくる」と話しています。

Q.我々は少し我慢しないといけないのでしょうか?
(加谷氏)
「今が本当に正念場で、まだ残念ながら物価に賃金が追い付いていないのですが、今年の春闘は本当の意味でのベースアップが3%台後半に行きそうですので、これは結構いい数字だと思います。今、値上げがいろいろありますが、この部分をちゃんと今年・来年の賃金に反映してもらって、『来年もしっかり賃上げが行われる』という流れが確立できれば、物価の上昇に賃金が追い付いてくるはずです」

「“タンス預金”をされている方は、そろそろ見直しを」日銀のマイナス金利解除 そのメリット・デメリット

 これまでは、銀行が日本銀行にお金を預ける時にマイナスの金利、いわば銀行にとっては手数料がかかっていたということになります。この場合、銀行は日本銀行に預けるよりも企業や個人に貸し出した方が利益が出ますので、貸し出したいという動きが高まり、経済の活性化が狙えるとされていました。今回、マイナス金利を解除したことで銀行に余裕が生まれ、大手銀行の普通預金など金利の引き上げが発表されています。マイナス金利解除の理由は、「賃金と物価がともに上昇して行く“好循環”の強まりを確認したから」「日米の金利格差が縮まれば、過度の円安を抑制できる可能性があるから」としています。

Q.ただ、マイナス金利を解除しても円安は止まりませんね?
(加谷氏)
「マイナス金利の解除をしないと、もっと円安が進んでいたリスクがありますので、日銀は正しいタイミングで解除したと思います」

 日本銀行の上田総裁は「当面、緩和的な金融環境が継続すると考えている。急激な金利上昇は避けられるとみている」ということです。加谷氏によると「本格的な金利上昇は早ければ“今年の夏ごろ”準備をしないと損失が出る恐れも」あるということです。また、「まとまった金を銀行に預けるタイミングは、さらに金利が上がったころが良いのではないか。“タンス預金”をされている方は、そろそろ見直しを!」と話しています。

Q.マイナス金利が解除されても、急いで銀行にお金を預けなくてもいいということですか?
(加谷氏)
「少しズレがあると思います。しかし、銀行も競争が激しくなっているので割と早く金利が上がってくる可能性もありますので、そのまま“タンス預金”をしていると、結構損をしてしまいます。ですので、銀行の金利動向をみながら、そろそろどこの銀行に預けるのか真剣に検討した方が良いと思います」

Q.自分がいつも使っている銀行じゃない銀行の方が金利が高いということが起きるのですか?
(加谷氏)
「みなさん、今までどこの銀行にするのかというのはあまり考えなかったと思いますが、金利が上がるとより高いところにとなりますので、お金が動き始めて銀行としても競争になって来て、我々からするとチャンスになるので、よく見ておいていた方が良いと思います」

 また、金利が上がると、保険会社の金融資産の利益が上がって、保険料が下がるというメリットがあるかもしれません。

Q.住宅ローンですが、変動金利にしていると金利が上がると影響はありませんか?
(加谷氏)
「確かに、これから金利が上がると変動金利だと支払いが増えていきますが、急には上がりません。仮に金利が急騰しても、5年間の猶予があるだとか、1回の上昇率は25%以下だとかの緩和措置がありますのであまり慌てる必要はありません。ただ、住宅ローンは長いのでこれからジワジワ支払額が増えてくるリスクは考えていた方が良いと思います」

Q.慌てて、すぐにローンの借り換えなどはしなくても良いんですか?
(加谷氏)
「そこまでは必要ないと思います」

加谷氏から「金の貯め方・使い方」“3つの提言”

 加谷氏から、3つの提言があります。
「支出のメリハリをつける」
「金利が上がる直前の銀行選びが重要!手数料・金利に注目」
「資金に余裕があれば新NISAなどの活用も」
ということです。

Q.まだ、景気好転の実感はないのですが、来年・再来年までじっくり腰を据えて待つべきですか?
(加谷氏)
「いよいよお金が動き出しましたので、その動向を良く見極めた上で最も有利になるように、今年前半はじっくり考えるタイミングだと思います」

(「情報ライブミヤネ屋」2024年4月1日放送)

    読売テレビのニュース