「ハマス」異例の大規模攻撃で――“中東の大動乱”リスク、「石油」で日本経済に大打撃も イスラエルへの怒り頂点に…なぜ?
イスラム組織「ハマス」が、イスラエルへの異例な大規模攻撃を展開しています。背景にはイスラエル政権と極右政党が対パレスチナで強硬姿勢を取っていることや、アラブ諸国のイスラエルへの接近が考えられます。今後の影響について専門家に聞きました。
有働由美子キャスター
「現地時間9日午後5時半ごろのガザ地区の映像を見ると、奥では黒煙が上がっています。黒煙はあちらこちら複数箇所で上がり続けています。この地域はこれまでも、事あるごとに武力衝突はありましたが、今回はこれまでと違うことが起きているのですね」
小野高弘・日本テレビ解説委員
「はい。奇襲攻撃を行い、民間人を人質に取り、攻撃するハマス側が自らSNSでその模様を公開しているなど、異例なことになっています」
「世界最強とも言われる情報機関を持つイスラエルを出し抜いて大規模な攻撃をするほどなので、ハマスは何か月も前から周到に計画していたのではないでしょうか。それだけ本気だということです」
有働キャスター
「今回、民間人を襲撃して100人以上のイスラエル人を人質に取っていますが、このようなことをする狙いは何でしょうか?」
小野委員
「パレスチナとイスラエルは長年対立してきましたが、今年、イスラエルに対する怒りが頂点に達しています。去年12月にイスラエルで発足したネタニヤフ政権は極右政党と手を結び、パレスチナにさらに強硬になってきました」
「パレスチナの地に強引に踏み込むようになり、難民キャンプなどを襲ってパレスチナ人200人以上を殺害したとも言われています。そのため、今回はその報復ともみられます」
「そしてその様子をハマス自らSNSに投稿しています。これはパレスチナの民衆に向けたアピールだとも考えられます。『皆さん、私たちハマスは皆さんのためにイスラエルを攻撃しています』というアピールです」
有働キャスター
「そもそもイスラエルとパレスチナは和平交渉も頓挫しているので、出口はなかなか見えないですね」
小野委員
「両者の関係は、ユダヤ人のイスラエルと、アラブ人のパレスチナの対立です。そのため本来はパレスチナの後ろ盾にアラブ諸国がいます。しかし最近、そのアラブ諸国がイスラエルと近づいて融和しようとしています」
「ハマスにとっては『我々パレスチナを置き去りにするつもりか』と焦ります。そのため今回、『そうはいかない』と待ったをかけているようにも見えます」
小野委員
「日本にも影響する話です。中東情勢が専門の現代イスラム研究センターの宮田律理事長は『ハマスを中東の大国イランが裏で支援している可能性があり、この先イランを巻き込んで“中東の大動乱”になる可能性がある』と指摘します」
「『そうなれば石油価格が跳ね上がり、中東から石油の9割以上を輸入している日本経済に大打撃があるかもしれない』と宮田さんは見通します」
有働キャスター
「長い歴史上の対立の上に今起きていることですが、ウクライナと同様、犠牲になるのは一般市民です。エスカレートすればするほど、停戦へのハードルも高まります。国連も関係する国も、一刻も早くこの攻撃を止める努力を諦めないでほしいと思います」
(10月9日『news zero』より)