「オーストラリア産の神戸ビーフ」まで……海外で“偽”日本産が横行、食品の被害は年間741億円 「北海道ミルク」「宇治抹茶」も
神戸ビーフや宇治抹茶、北海道のホタテ…。「日本ブランド」の食品の輸出を増やそうと国を挙げた取り組みが進む中、海外では日本産をうたった偽物の販売が横行しています。政府は日本人が多いタイでの情報収集を手始めに、模倣品の対策に乗り出しました。
有働由美子キャスター
「和牛は海外でもおなじみになっていますが、パッケージに『KOBE』のラベルが貼られた商品が海外で売られています。ブランド和牛の神戸ビーフと思って買う人がいるかもしれませんが、別物です」
「他にも、マレーシアで売られていた『北海道のホタテ』や『北海道ミルク』、タイで売られていた『宇治抹茶』、中国で売られていた『長崎のカステラ』などもあり、いずれも偽物だとみられています」
「日本のブランド食品を積極的に輸出しようと思っても、こうした偽物が出回ると影響が出てしまいますよね」
小野高弘・日本テレビ解説委員
「食品関係の偽物が日本企業に与える被害の額は、特許庁によると年間で推定741億円(2020年)にもなります。今、国を挙げて日本ブランドの食品などの輸出を倍以上に増やしていく方針のため、農林水産省は模倣品対策も強化しようという考えです」
小野委員
「ブランド食品を輸出している当事者たちはどう見ているのでしょうか。神戸ビーフの認証を担う『神戸肉流通推進協議会』の担当者に聞きました」
「担当者は『今、右肩上がりで輸出が伸びている。海外でも知名度が上がったため模倣品も増えたのでは。神戸ビーフの名前を付ければ高く売れるので模倣されやすいのではないか。神戸ビーフがたいしたことないと思われるのは腹立たしい』と言います」
有働キャスター
「手塩に掛けてこの味にしているわけですからね」
小野委員
「海外でレストランに入ると、『オーストラリア産の神戸ビーフ』が出てくることもあります。こんな話を生産者が聞いたら、『何だそれは』と涙が出てきます」
有働キャスター
「ただ食品の場合は、海外の消費者が本物かどうかを見分けるのは、味覚の難易度が高いと思います」
小野委員
「そのために政府が動き出しました。第一弾として、タイ・バンコクのJETRO事務所に窓口を設置し、情報を集めることにしました。タイには7万人以上の日本人が住み、日本食レストランも約5300軒あります」
「悪質なケースがあればタイの当局に伝え、取り締まりを依頼することも想定しているそうです。開始して10日ほどですが、早速相談が寄せられ始めているといいます。タイだけではなく、他の国にも順次広げていく考えだそうです」
有働キャスター
「効果的に偽物を防いでいくには、どうすればいいでしょうか?」
落合陽一・筑波大学准教授(「news zero」パートナー)
「例えば、偽造が難しい認証シールやICチップ、二次元コードとブロックチェーンを組み合わせるなど方法はいろいろありますが、コストパフォーマンスの問題が大きいです」
「例えばワインなど、よほど付加価値が高い食品でないと費用対効果の面でそこまでする意味を見出すのが難しいということはあります。正規品のPRと、その値段を上げていくことしかないかなと思います。非常に時間がかかるなと思います」
有働キャスター
「ブランド食材はこれからの輸出品として大きな可能性を秘めているので、本気度が問われているのだと思います。フランスのワインやイタリアのチーズは国ぐるみで守っていますし、日本の本気を世界にどう見せるかにかかっています」
(11月28日『news zero』より)