韓国で“日本風”飲食店が増加中 若い世代中心に好評 「日本語だけ」看板に問題も
韓国・ソウル。若者に人気の街で今、“日本風”の飲食店が増加中です。街中を歩いていると、いたるところで目につく日本語の看板。中には、日本のビールケースに漢字が書かれたのれんをかけた“日本で見かける街中華そのもの”なお店までありました。一時は日本を敬遠する雰囲気もあった韓国ですが、数年前から日本食がブームになっているのです。
すし店などでいう“おまかせ”スタイルといった日本特有の文化が、若者を中心に注目されています。
20代
「特定の食べ物一つが流行しているというよりは、日本の感性、日本の雰囲気そのものがはやっている感じです」
「焼きそばも食べましたし、お好み焼きも」
新型コロナ後に日本に旅行する人が増えると、雰囲気だけでも味わいたいと“日本風”の飲食店ができはじめたのです。
一体どこまで“日本風”なのか、「あたし」という看板を掲げた居酒屋をのぞいてみました。
入り口には「引く」と日本語で書かれていました。中に入ると、日本でおなじみの注意書きが…
「当店ではお車でご来店のお客様への酒類の販売をお断りしております」
「ここは日本…?」と錯覚しそうなほど見事な再現ぶりです。
さらに店内に貼り出されたメニューも日本語。ただ、よくみると「サクサクチキソ唐揚げ」や「タルタルキリなんばん」などちょっとあやしいものもありました。
店長
「大阪旅行中に行ったお店を参考にして作りました」
このお店は最近の日本食人気を受けて、去年、韓国料理店から“衣替え”したということです。客層は20代から30代と、若い世代からの評判が上々で…
客(30代)
「日本に遊びに行っているようで、韓国で日本を感じながらたくさん食べられるのがいいと思います」
◇
こうした”日本風”人気を受け、看板の文字デザインなどを手がける書家のもとには…
デザイン書家 孔慶順(コン・ギョンスン)さん
「2022年と2023年を比較すると2倍以上、3倍ほど(日本語の依頼が)増えました」
その依頼内容にも変化があるといいます。
デザイン書家 孔慶順(コン・ギョンスン)さん
「日本人が見てもおかしくない字にしてほしいと、これまではマネして書いたような文字が多かったですが、今は“本当の日本”を望んでいます」
◇
ただあまりにも“本当の日本”を突き詰め過ぎた結果、問題も出ています。街の人が戸惑いを口にしていたのは、「日本語だけ」書かれた看板が増えていることについてです。
「読むのがちょっと難しいです」
「韓国なら韓国語の看板が多くあるべき。(外国語の看板が)多すぎます」
実は、韓国では看板にハングルがないことは原則として法律違反。ただ処罰規定がないため、取り締まりが行われることはごくまれで、ソウルの街中には日本語のみの看板がいくつも出ていました。私たちが取材したお店でも――
居酒屋「あたし」店長
「オープン当初は看板に韓国語表記がなかったので、通報されました」
通報されたという店の看板には、申し訳程度にハングルが書かれていました。
さらに、韓国のあるもんじゃ焼き店ではメニューが批判の的になりました。一見するとハングルで書かれているものの、なぜか価格だけ日本円表記になっているのです。
メニューの一番上には「円で表記された価格は0をつけてウォンに計算してください」と書かれていますが、これには「やりすぎ」と否定的な声が続出。
結局、この飲食店では韓国ウォン表記に変更することになったといいます。
過熱する韓国の日本食ブームは、今後、どのような広がりを見せるのでしょうか。