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「原爆」連想のファンアート続々――米映画「バービー」公式SNSで物議 「侮辱的」「ネタにしていいものではない」…広島県民「受け入れられぬ」

2023年8月2日 9:43
「原爆」連想のファンアート続々――米映画「バービー」公式SNSで物議 「侮辱的」「ネタにしていいものではない」…広島県民「受け入れられぬ」

アメリカ映画「バービー」の公式SNSが、原爆を連想させ、原爆をやゆするようなファンアートの画像に好意的な投稿をしたとして批判が相次ぎました。配給元は「無神経な投稿」として謝罪。広島では反発する声が上がり、市民団体は署名サイトを作りました。

■『バービー』×『オッペンハイマー』

アメリカのワーナー・ブラザースが配給し、11日から日本でも全国ロードショーされる映画『バービー』。そのバービーを巡り、ある画像がSNSで拡散されています。

その画像でバービーを担いでいるのは、原爆の開発を主導した物理学者の人生を描いた映画『オッペンハイマー』で“原爆の父”と呼ばれる男性を演じた俳優です。

■映画人気で「ファンアート」社会現象に

『バービー』と『オッペンハイマー』の2つの映画は7月21日にアメリカで同時に公開され、大ヒットしています。

ロサンゼルスでは、2作品を同日鑑賞する人たちから「『バービー』がこのシアターで3時から上映されます。その後、6時上映の『オッペンハイマー』を見ます」「私たちは『バーベンハイマー』って呼んでいます」という声が聞かれました。

2作品を続けて鑑賞する“バーベンハイマー”という造語が生まれ、バービーと原爆投下を連想させる、2つの世界観を掛け合わせたファンアートが次々と誕生しました。SNSで拡散されるなど社会現象になりました。

■公式アカウントが反応、配給元が謝罪

これに反応したのが『バービー』の公式アカウントです。

燃え盛る炎の中、オッペンハイマーがバービーを担ぐ画像には「忘れられない夏になりそう」とコメント。バービーの髪がきのこ雲のように変えられた、原爆を揶揄(やゆ)するような投稿には「このスタイリングはきっとケン(映画の登場人物)だね」。

こうした冗談めいた返答に「ネタにしていいものではない」などと批判が相次ぎました。ロサンゼルスにいた人からも「これはかなり侮辱的ですね。なんで? 誰が作ったの?」と疑問の声が上がりました。

配給元のワーナー・ブラザースは、「最近の無神経なソーシャルメディアへの投稿について、心からお詫び申し上げます」とする声明を発表しました。同社によると、問題となった公式SNSの投稿は、既に削除したということです。

■広島県民は「理解が足りない」

8月6日に78回目の“原爆の日”を迎える広島で聞きました。

広島県民(50代)
「きのこ雲を見て嫌な気持ちをする人がいるということへ理解が足りないなと」

広島県民(80代)
「原爆を受けた日本の者としては、ちょっと受け入れられない画像だなと」

■再発防止策を求めて「署名サイト」も

核兵器廃絶を訴える広島の団体「広島・長崎を忘れない市民有志」は、ある呼び掛けをしました。団体の田中美穂さん(28)は「『NOバーベンハイマー』。『#バーベンハイマー』に対して、それはNOだというところ(を伝えたい)」と言います。

団体は1日夜、配給会社への再発防止策の実施などを求め、署名サイトを立ち上げました。

田中さん
「8月6日、9日を前にしてのこの事態です。知らないということをまず分かって、そこから(核について)知っていくことにつながれば、どんどん変わっていくんじゃないかなと」

■落合さんに聞く 「認識のズレ背景に」

落合陽一・筑波大学准教授(「news zero」パートナー)
「アメリカでは今でも世論調査などを見ると、原爆は日本との戦争を終わらせた、つまり勝利の証だという面もある、という認識があります。よくアンケートなどでも出てきます」

「一方で、日本では戦争の負の感情と最も強く結びついている象徴だと思います。そのズレがあるから、このSNSの騒動は起こるべくして起きてしまったなと思います」

「ただ1つの考え方としては、原爆をタブー視せず、触ってはいけないものではないので、フィクションの中でも世界中の人たちが知るためにも、日本以外のクリエイターが原爆を題材にした作品をたくさん作っていってほしいなと思います」

「どんな悲惨なことがあったのか、どういった問題として今取り上げられているのか、ということを伝えてほしいです。例えば欧米から見た広島の映画などです」

有働由美子キャスター
「(今回の)投稿をした人たちは『これ何か問題あるんだっけ?』と思っているかもしれません。原爆の話、広島・長崎での被爆の実相が理解されていないのだと思います」

「これをきっかけに、罪のない命が失われたこと、(原爆を)落とされた側の思いを私たち一人ひとりも考えて、世界に向けてしっかり発信する必要もあると思います」

(8月1日『news zero』より)

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