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日韓“草の根交流” 日本への思いとは?

2012年10月12日 15:51
日韓“草の根交流” 日本への思いとは?

 竹島の領有権問題で日本と韓国の政治的な関係が冷え込んでいる。そんな中、日本語を学ぶ韓国の若者は複雑な思いを抱えながらも、日本人との交流のあり方を模索している。ソウル支局・永廣陽子記者が取材した。

 鳴り響く三味線に、太鼓の音。3日、ソウルで開かれたのは日本の文化を楽しんでもらい、日韓の交流を深めようという年に1度のイベントだ。会場には沖縄のエイサーも登場し、韓国の人たちの注目を集めていた。法被姿の日本からの参加者たちは、記念撮影に引っ張りだこだ。着付けの体験コーナーも人気で、参加した韓国の女性が「着物がとてもきれいで、日本に行った気分です」と笑顔で話してくれた。

 2012年8月、韓国の歴代大統領として初めて竹島に上陸した李明博大統領。日本側の反発は大きく、日韓関係は冷え込んだ。こうした中、不測の事態に備え、2012年のイベントは警備が強化された。

 「最初はアニメで日本語を知るようになったんです」

 こう語るのは、キム・ジュンさん。ボランティアとしてイベントの運営に参加した大学2年生だ。留学経験は無いが、日本からの学生ボランティアに日本語で積極的に声をかける。日本語で会話をし、かわいらしい女性に緊張したりと、日本人との交流を楽しんでいるようすだ。日本の学生とは日本のアニメの話で盛り上がった。

 ただ、日韓の間に横たわる領土や歴史の問題について話が及ぶと、議論がかみ合わず意見の交換とまではいかなかった。日本人の学生ボランティアが「互いに互いの歴史が正しいと信じて話しているので、ずっと平行線のまま来ているのかなと思う」と話す一方で、キム・ジュンさんはこう話してくれた。

 「韓国と日本の関係について話をしようとしたんですけど、あまり詳しくない感じがして…」

 日本人の友人を持ち、日本に親しみを感じていた韓国の学生たちはもどかしさを抱えている。「せっかく親しくなったのにケンカしたくない」「私たちはとても深刻に考えているのに…」と、韓国の若者たちの本音を聞くことができた。

 国と国との関係が冷え込む中、日本人との友情を築くことは出来るのか?キム・ジュンさんは日本語の勉強を続けていくべきか悩んでいた。日本語を学んでいく中で、こんなやりとりがあったという。

 「そんな国の言葉を勉強するよりは中国語を勉強したらどうだ、どうして勉強するんだ、こういう問いに反論することができなかった」

 軍隊にいる間も、時間を見つけては日本語の勉強を続けてきたキム・ジュンさん。9月、日本の外務省の招へい事業で初めて日本を訪れた。キムさんが「一期一会ですね。これ。家族の方々がたくさん連れて行ってくださった」と言って見せてくれたのは、日本のホストファミリーの写真だった。ホームステイ先の家族とは得意の日本語で話し合った。東日本大震災の被災者に直接話を聞く機会もあった。キムさんはその経験を経て感じたことを「一生懸命生きていこうとする人たちを見ました。私は確実に日本が好きで、日本に行って仕事をしたいと思いました」と語る。

 初めての日本で日本への思いを確認したキム・ジュンさん。さらに、その日本に韓国の代表として駐在するシン・ガクス駐日大使と出会ったことで、生まれた国への愛情を改めて感じたといいます。その時の思いを「やはり基本には自分の国への愛が必要だ。愛国精神が必要だという気持ちで帰ってきた」と、キム・ジュンさんは語る。愛国心は日本による植民地支配を経験し、国を失った歴史を持つ韓国の人々にとって大切なキーワードだ。

 3日、ソウルで開かれた交流イベントは、日韓の参加者は手を取り合いフィナーレを迎えた。キム・ジュンさんは日本の女子学生と連絡先を交換していた。国と国との関係が難しい時だからこそ、日本の友人との関係を大切にしなければならないと彼は考えている。