“首謀者”の男 テロ最中に地下鉄利用も
フランス・パリの同時多発テロ事件から1週間を迎えた。捜査当局は首謀者とみられるアブデルハミド・アバウッド容疑者の死亡を発表したが、一方でその動向を把握できていなかったことが分かった。月末には世界の首脳らが集まる国際会議を控える中、その治安対策に懸念の声もあがっている。
一夜が明けて新たな治安上の懸念が浮上している。死亡した首謀者と見られるアバウッド容疑者が劇場でたてこもりが起きている最中に、地下鉄を使った可能性が報じられている。地元メディアが伝えた情報だが、駅の監視カメラに映っていたということで、堂々と公共交通機関を使っていたことになる。
死亡したアバウッド容疑者について、諜報機関は数か月前からアバウッド容疑者がフランスに対する複数のテロ行為を起こそうとしていたことを把握し、また、その背後に過激派組織イスラム国があることも認識していた。にも関わらず、その所在が把握できていなかったことが分かった。
フランス・カズヌーブ内相「ヨーロッパにどういうルートで入ったか、どうフランスに入ったか分からない」
アバウッド容疑者の消息が明らかになったのは、テロ事件から3日後で、ヨーロッパ以外の情報筋から、ギリシャにいた、との話を聞いたとしている。これを受けて、フランスの新聞各紙は20日朝一様に、アバウッド容疑者がどのようにヨーロッパに入ってきたかの検証記事を掲載している。
念頭にあるのは、シリアからヨーロッパに押し寄せる移民問題とヨーロッパ圏内での自由な移動を認めるシェンゲン協定の是非で、カズヌーブ内相は今日20日、EU(=ヨーロッパ連合)の緊急閣僚会議の開催を呼びかけて、対応を協議することにした。
首謀者が死亡したことについてパリ市民は、好意的に受け止める一方で動揺は残っている。
パリ市民「まあ良かったよ。私の友人も劇場にいたから」
別のパリ市民「これで終わりではない。まだ他の容疑者もいる」
フランスは19日、非常事態宣言の3か月延長を決めた。また、今月末には、アメリカ、ロシアなど世界各国の首脳が一同に集まる国際会議「COP21」も予定されている。
首謀者とみられるアバウッド容疑者の死亡で大きな節目を迎えた捜査だが、解決に向かうという期待感よりも不安が増してしまったといわざるをえない。