「慰安婦書籍」訴訟 元慰安婦側主張認める
韓国の朴槿恵大統領は13日、慰安婦問題の解決に向けた日本との合意について「努力したことは認めてほしい」と述べ、国民へ理解を求めた。こうした呼びかけの背景には日本との合意に対する厳しい国内世論があり、朴大統領は難しいかじ取りを迫られている。
13日、新年の会見に臨んだ朴大統領は、いわゆる従軍慰安婦問題の最終的な解決に向けた日本と韓国の合意について次のように述べた
朴大統領「交渉というのは様々な現実的制約があるため、100%私たちが満足するようにはできなかった。今できる最上の補償を受けて、合意に向け努力したことは認めてほしい」
韓国の根強い反対世論を念頭にあらためて国民に理解を呼びかけた形。ただ、日本政府が移転を求めている日本大使館近くに設置された慰安婦像については「政府が少女像(慰安婦像)をどうこうしなさいと言える問題ではない」と、移転は保証できないとの認識を示した。慰安婦像の前では13日も市民団体による集会が開かれた。
日韓合意から2週間。一般市民はどう評価しているのか。8日に発表された「韓国ギャラップ」の世論調査では、合意に反対し慰安婦問題について「再交渉するべき」とする意見が58%に上った。また、「再交渉の必要はない」は28%、「意見を留保する」は14%だった。
そんな中、ある裁判の判決が13日、言い渡された。
韓国・世宗大学の朴裕河教授が著書「帝国の慰安婦」の中で、慰安婦の一部について「日本軍の兵士と同志的な関係だった」などと表現したことが名誉毀損にあたるとして元慰安婦らが賠償を求めた裁判で、元慰安婦らの主張が認められる判決が言い渡されたのだ。
原告の元慰安婦「日本の安倍首相がはした金を持ってきて政府と協議したというけど、誰と協議すべきですか。なぜ被害者の前では謝罪せず、違うところに行って協議するのですか」
こうした強い世論に押され、朴大統領が日本に対し再び慰安婦問題を取り上げることもあるのだろうか。
NNNソウル支局・藤田賢治支局長「今回の日韓合意は朴大統領自身が決定を下し、国民のみならず国際社会に向けても大々的に発表しているから朴大統領が慰安婦問題を蒸し返すことは考えづらいと思う。また、北朝鮮が核実験を行ったことでアメリカからは日本とのさらなる連携を求める声も出ている」
北朝鮮の朝鮮中央テレビは13日午後、金正恩第1書記がアメリカに対する強硬な姿勢を強調したと報じた。
こうした中、韓国政府としては慰安婦問題で日本との関係をこじらせたくないという考えがありそうだ。また、景気の低迷が続く韓国では経済界から日本との連携を強めてほしいとの声もある。
一方、朴大統領が慰安婦像の移転は保証できないとの認識を示したことについて、菅官房長官は13日、「外相合意に基づいて韓国政府が適切に対応されると考える」と話した。
日本との合意をめぐり国内から強い批判を受ける一方、日本との連携も必要な朴大統領。今後、難しいかじ取りが迫られることになりそうだ。