スー・チー氏“深刻な貧困問題”どう挑む?
ミャンマーで去年の総選挙の結果を受けた新しい議会が招集された。過半数を占めることとなったNLD(=国民民主連盟)を率いるアウン・サン・スー・チー氏。3月にも新政権が発足する見通しだが、そこには多くの課題が残されている。
■東南アジアで最も貧困層が多い国
今月1日、アウン・サン・スー・チー氏が議場に到着する姿があった。新議会で過半数を占めるNLDの党首であるスー・チー氏。3月にも発足する見通しの新政権で、事実上のトップとしてミャンマーを率いることになる。しかし、新政権が解決すべき問題は少なくない。最大都市ヤンゴンの貧困層が多く暮らす村では―
「15日間ぐらい仕事がない。収入がなくて食べ物に困っています」
建築現場などで働くトントンウェンさんは、この村で妻と子ども5人の計7人で生活している。仕事が無い日も多く、収入は不安定で、食べるものにも困ることがあるという。国連開発計画によると、ミャンマーは東南アジアで最も貧困層が多く、トントンウェンさんのような家庭も珍しくないという。
■学校は無料でも「バス代」がない
また、子どもたちの教育問題も深刻だ。トントンウェンさんの長女、チョースインさん(13)。彼女は、両親と建築現場などで働いていて、学校に通ったことはない。国勢調査によると、ミャンマーでは約16%の子どもが一度も学校に通ったことがないという。
学校に行きたいかとの質問に「行きたいけど…」と答えるチョースインさん。自分が働く代わりに、妹と弟はなんとか小学校に通うことができている。11歳の妹は「学校は好き」「将来は先生になりたい」と話す。しかし、その学校でも貧困問題が影を落としているという。学校の教師に聞いてみると―
教師「(Q:学校を途中でやめてしまう子どもは?)A:はい、途中でやめてしまう子どももいます」「ノートや鉛筆などが買えない子どももいます」
公立小学校の場合、基本的に学費は無料だが、学校に通わせることは簡単ではない。学校が家から離れているため、毎月バス代を払う必要があるが、このバス代を払うことすらままならない家庭も多いのが実情だ。
貧しい暮らしが続くトントンウェンさん一家。新政権に期待するトントンウェンさんは、スー・チー氏を応援するためにNLDのメンバーにもなっているという。
トントンウェンさん「政権が変われば、私たちの暮らしは変わると信じています」「生活は改善しなくても住む環境は改善すると思います」
■スー・チー氏の最側近に聞く―
こうした貧困や教育問題について、たびたび改善を訴えてきたスー・チー氏。国民から圧倒的な支持を得ているが、これらの問題に対する具体的な解決策はまだ示していない。スー・チー氏に長年寄り添い、彼女の最側近でもあるNLD創設者の1人、ティン・ウー最高顧問。彼が我々の単独取材に応じた。
「スー・チー氏がいくら有能でも、NLDだけで解決するのは難しい。国が一体となって取り組み、NGOや他国の協力も必要です」
長年にわたり続いた軍主導の統治から大きな転換点を迎えるミャンマー。スー・チー氏が国民の声にどう応えるのか、その手腕が問われている。