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相次ぐシリア難民 難民家族が語る思い

2016年4月29日 16:37
相次ぐシリア難民 難民家族が語る思い

 内戦が続くシリアからヨーロッパを目指す難民が後を絶たない。シリア難民となったある家族を、吹上直裕記者が取材した。


■命がけの密航―その理由―
 3月、ギリシャ・レスボス島を訪れた。取材したこの日もシリアからの難民たちを乗せたボートが到着していた。ヨーロッパを目指して命がけで密航する難民が後を絶たない。

 去年9月、トルコの海岸にて遺体で見つかったシリア難民の男の子、アイラン・クルディくん(当時3)。家族とヨーロッパに向かう途中でボートが転覆して死亡した。彼らはなぜ命がけでヨーロッパを目指したのだろうか?電話取材に応じてくれたアイランくんの父親・アブドラさんが、その経緯を語った。

 「シリアでは理容師をしていたが、トルコでは建設作業員の仕事しかなかった。息子2人には皮膚の病気があり、高い薬を毎日与えなければならなかった」


■足りない必需品
 アイランくんの兄や母親もボートの転覆で死亡した。妻と2人の子どもを失ったアブドラさんは、ヨーロッパに渡ることを断念した。アブドラさんはその後、イラク北部のアルビルで難民の子どもたちの支援をしている。そこでは子どもの数が増え続け、医療品や服が足りないという。アブドラさんはこう語る。

 「亡くなった息子たちのことを考え続けている。難民の多くの子どもたちと、母親・父親が苦しんで支援を必要としていることを忘れないでほしい」


■「世界各国はシリア難民にドアを開いてほしい」
 去年12月、カナダ・バンクーバー空港にアイランくんのおじ、モハマド・クルディさんの家族7人が降り立った。同じく難民であり、生後8か月の赤ちゃんもいる。7人はカナダ政府から難民認定を受けた。モハマドさんはシリアで理髪店を営んでいたが、過激派組織「イスラム国」が街を襲ったという。その時の様子をモハマドさんはこう語った。

 「『イスラム国』が街を包囲して、食品や医薬品を入れないようにした」

 その後、トルコやドイツで難民生活を経験しカナダに到着。モハマドさんは3年ぶりに理容師の仕事を再開した。カナダで新生活を始めたモハマドさんだが、今もシリア難民の苦しい状況に心を痛めている。

 「シリア難民は支援を必要としている。世界各国はシリア難民にドアを開いてほしい」

 密航する難民が後を絶たないことを受けて、EU(=ヨーロッパ連合)とトルコは密航してきた難民をトルコに送り返すことを決定。一方で、EUは送り返したのと同じ数のシリア難民をトルコから受け入れる。

 ヨーロッパに押し寄せる人の数は去年100万人を超えた。国に帰ることができない難民たちに、各国はどう支援を差し伸べることができるのだろうか。