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党大会ひかえた中国 日中関係への影響は

2017年1月3日 0:38
党大会ひかえた中国 日中関係への影響は

 2017年秋、中国政治の最大の山場が訪れる。それは最高指導部が大幅に入れ替わる5年に一度の中国共産党大会。13億人の頂点にたつのが政治局常務委員の7人だ。これまでの定年制の慣例に従えば、習近平国家主席と李克強首相以外の5人が入れ替わることになる。

 この常務委員のポストをめぐって、党内では、すでに熾烈(しれつ)な権力闘争が始まっている。習主席は、2016年の重要会議「6中全会」で、党中央の「核心」と位置づけられた。そして、党則には「トラもハエもたたく」反腐敗闘争をさらに進め、指導部も例外ではないことが銘記された。政敵をたたく最大の武器である反腐敗闘争と、核心という権威付けで権力基盤を着実に固めつつある。

 日中関係筋は、今の習主席について、「江沢民氏の院政に縛られた胡錦濤氏とは全く異なる権力を手にした」と分析する。ただ、中国の権力闘争は一寸先は闇。2016年に習主席の側近とされた黄興国天津市長が突如失脚した例もあり、これから先、何が起きるのか、まだ予断を許さない。

 安定した2期目の態勢に向けた人事を行うには、習主席は、党大会に向けてさらに求心力を高めていくことが求められる。そんな中、外交分野の失点は思わぬ痛手になりうる。今後の中国外交の最大の焦点は、トランプ政権への対応。トランプ氏と台湾・蔡英文氏の異例の電話会談をうけ、中国は、アメリカ側に抗議したが、トランプ氏を表立って批判することは避けた。現段階では、表だって衝突することを避けたい思惑も見え隠れする。

 中国の対米スタンスについて、国際問題に詳しい中国の専門家は、「党大会がある2017年、中国の指導者は周辺環境がざわつくことを好まない」と指摘した。また日中関係筋も「党大会が終わるまで、中国は対米政策では無理はしない。アメリカともめている姿は痛手だ」と口をそろえる。

 ただ、最近では、南シナ海で中国軍が、アメリカの無人潜水機を奪う問題が起きた。これが習指導部の指示のもと行われたのかどうかは定かではないが、台湾問題や南シナ海問題など、中国が「核心的利益」と位置づける領土問題では、たとえアメリカが相手でも中国は一歩も引かない姿勢だ。トランプ政権の出方次第では、領土問題が米中間の大きな火種として目立ってくる可能性もある。

 米中関係は、アメリカと同盟関係を結ぶ日本が、中国とどう向き合うかにも影響する。2017年は、日中国交正常化45周年の年。これをきっかけに、日本は、対中関係の改善を図りたい考えで、中国側も、さまざまなレベルで交流を重ねることが重要との立場だ。

 文化交流の観点では、異例のスピードで中国での公開が決まった新海誠監督の映画「君の名は。」が記録的なヒットとなり、若者を中心に日本文化の浸透に大きな役割を果たした。

 また、観光の面では、中国人観光客の爆買いの勢いは衰えたものの、日本を訪れる中国人観光客の数は増え続けている。ただ、民間交流が進む一方、政治対話の場では、日中関係は「前向きな兆候はあるが、依然、脆弱(ぜいじゃく)な状態」という評価が定着している。

 沖縄県の尖閣諸島沖での中国漁船による領海侵入は、2016年夏のピーク時に比べて回数は減ってはいるものの、侵入する際の公船の数は増えている。

 日中のNPOが2016年に両国で行った世論調査では、日中関係悪化の最大の要因が尖閣問題だとする声が大多数を占めた。尖閣問題は、日本人の嫌中感情や、中国人の反日感情を生む最大の懸案となっている。

 さらに、中国空軍が宮古島上空を通って太平洋に向かう遠洋飛行訓練を行い、自衛隊機がスクランブルをかけるなど空でも緊張状態が続いている。海と空での衝突を避けるための連絡メカニズムの早期運用実現に向け、日中間で協議を重ねているが、具体的に詰め切れていないのが現状だ。

 日本は、中国との問題をトップ会談で改善へ導く狙いから、2016年9月、杭州G20サミットの場で日中首脳会談を行ったが、その会場は、他国の首脳会談とは異なり、飾り気のない部屋で、記念撮影をする首脳の背後に両国の国旗は用意されなかった。日本への融和姿勢が「弱腰」と映れば、国内の権力闘争でマイナスとなる恐れがあると習指導部が考えた可能性もある。

 国内の政治と複雑に絡み合う中国の外交姿勢。党大会を控える中で日中関係はどう動くのか。日本は、2016年の開催が見送られた日中韓首脳会議を東京で開催し、まずは、李克強首相の初の訪日実現を目指す。国交正常化45周年を迎えた日中友好の機運を、政治での関係改善に活用したい思惑がある。

 一方で、中国はどうなのか。日中関係に詳しい清華大学国際関係研究院の劉江永教授は、「中国は、安倍政権のアジア外交の根底には“中国封じ”があるとみている。例えば、独立色の強い台湾の蔡英文氏を日本が支持していることもその一つになっている」と解説する。

 また、別の日中関係に詳しい中国の専門家からは「大国になった今、日本への配慮は必要ないと中国は考えている。中国のこの強硬姿勢が、日中関係が改善しない最も大きな要因だが、党大会がある中、変化は見込めない」との声があがる。

 党大会に向け強い指導者をアピールしたい習主席。権力闘争が激化すれば、指導力を誇示する場として尖閣問題でさらなる強硬姿勢に転じる可能性も排除できない。

 国交正常化45周年の2017年も、日中関係はなお「脆弱な状態」が続くとみられる。