「東部で虐殺」、「ロシア軍が撤収」 ウクライナ巡り米露が“情報戦”
ウクライナ情勢で緊迫が続くなか、アメリカとロシアが激しい情報戦を繰り広げています。「軍の部隊を撤退させている」とするロシアに対し、アメリカは逆に「部隊を増強している」と反論しています。
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ロシア国防省は15日、実効支配するウクライナのクリミア半島からの撤収の様子とする映像を公開しました。映像には、ロシア軍の戦車が列車にのせられ運ばれていく様子が映っていました。
ロシアは「軍事演習を終え、部隊の一部が撤収した」としています。
プーチン大統領は15日、「『戦争を望んでいるのか?』と言えば、答えは『ノー』だ」と語っていました。
一方、アメリカ政府高官は、国境沿いのロシア軍はこの数日で、逆に最大7000人増えたと指摘しています。
アメリカ ブリンケン国務長官
「重要な部隊が離れるのでなく、国境に向かっている。正反対の行動であり、この部隊が国境から離れるのを確認する必要がある」
食い違う主張…。アメリカとロシアの間でいま、激しい情報戦が続いています。
今回、アメリカは「ロシアがうその情報や自作自演で被害を装い、侵攻の口実にする恐れがある」とけん制してきました。
ワシントン外交筋
「アメリカは機密情報を思い切って出し続けている。ロシアの手口を先んじて暴露し行動を制約しようとしている」
ロシアの外交安全保障に詳しい笹川平和財団の主任研究員、畔蒜泰助氏は「(今回のロシアの撤退は)アメリカが 『ロシアが軍事侵攻を始める』という情報を打ち消すためのリアクションである」と指摘しています。
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こうしたなか、ロシアが欧米を揺さぶるカードのひとつとしてちらつかせているのがウクライナ東部の“独立問題”です。
親ロシア派が支配するこの地域について、ロシア議会は15日、「独立国家」として承認するようプーチン大統領に求めました。
笹川平和財団・主任研究員 畔蒜泰助氏
「すぐ軍事侵攻ということではない。これをやってしまうと次のステップは『独立国家に対して軍事支援をしましょう』という話になり、場合によったら軍事同盟という形に。このタイミングでこれをやったのは『我々にはこういうカードもありますよ』と」
一連の動きには、外交交渉の材料を積み重ねる狙いがあるとみられます。
プーチン大統領はさらに「我々の評価では、いまウクライナ東部で起きていることは大量虐殺にあたる」と“大量虐殺”にまで言及したほか、ロシアメディアは、17日、「ウクライナ東部で親ロシア派が砲撃をうけた」と報道しています。
これに対し、アメリカ国務省のプライス報道官は「軍事行動の口実にするためのでっちあげだ」と批判しました。
こうした激しい情報戦のなか、外交努力で緊張緩和の糸口をさぐる動きも続いています。
19日にはG7の外相会議が開催されるほか、17日夜、岸田総理もプーチン大統領と電話会談し、ウクライナ情勢について意見をかわすことにしています。