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NASA×民間 米・宇宙開発の新たな形

2019年3月15日 5:32

アメリカでは、宇宙開発がいま、大きな転換点を迎えている。キーワードは「民間企業の活用」。NASA(=アメリカ航空宇宙局)が進める宇宙開発の最前線を取材した。

◆2011年以来の“重要イベント”

今月2日、アメリカ・フロリダ州のケネディ宇宙センターから有人型宇宙船が打ち上げられた。今回、この宇宙船をISS(=国際宇宙ステーション)にドッキングさせ、再び地球まで帰還させる無人の試験飛行が行われた。

「クルードラゴン」と名付けられたこの宇宙船は、民間の宇宙企業「スペースX」が開発した最新型で、人を乗せて宇宙に運ぶことを想定している。

その打ち上げの前の日──

NASA ブライデンスタイン長官「これはアメリカ史上においても極めて重要なイベントです。我々はアメリカ本土から、アメリカ製のロケットで、アメリカ人宇宙飛行士を打ち上げようとしています。これは2011年にスペースシャトルが退役して以来、初めてのことです」

実はアメリカは、2011年にスペースシャトルを退役させて以降、コストなどの問題からアメリカでの宇宙飛行士打ち上げを中断し、ロシアの宇宙船に頼っている。今回の無人試験飛行が成功すれば、アメリカ国内での打ち上げ再開に向けて大きく前進するのだ。

◆“全く異なる方法”の打ち上げとは

そしてもう一つ、今回の試験飛行はアメリカの宇宙開発にとっても大きな意味を持っている。

NASA ブライデンスタイン長官「今回の打ち上げは、これまでとは全く異なる方法で行います。NASAは(宇宙船を)所有するのではなく、顧客としてサービスを買う」

全く異なる方法。それは、NASAが宇宙船をつくるのではなく、“民間企業に開発を依頼する”という、これまでにない手法だ。

NASAはスペースXなどアメリカの民間企業2社に宇宙船の開発を依頼。民間企業は将来的な宇宙旅行ビジネスを念頭に、できるだけコストを抑えて宇宙船の開発を進めるので、これを活用することで、NASAは宇宙開発において大幅なコスト削減が見込めるというシナリオを描いている。

◆どのくらい削減できる?

NASAは今後、国際宇宙ステーションがある低い軌道への飛行を民間企業に依頼し、浮かせた予算をより遠い月での基地建設や火星の有人探査に振り分けて宇宙開発を推進していく方針。

今回、開発を行ったスペースXのイーロン・マスクCEOも、そのNASAの考えに共感した一人だ。

スペースX イーロン・マスクCEO「人類は月面に基地を造り、人間を住まわせ、火星に人を送るべきです」

そして日本時間の8日夜、無人試験飛行を行っていた最新鋭の宇宙船クルードラゴンは地球に帰還。無人試験飛行は、打ち上げからISSとのドッキング、地球への帰還まで、すべて成功した。収集したデータなどに問題がなければ、この夏にも実際に宇宙飛行士2人を乗せて打ち上げる予定。

民間企業の力を活用したアメリカの新しい宇宙開発の形。NASAは2028年までに再び宇宙飛行士を月に立たせたいとしている。