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北朝鮮で人気のスポーツは?綱引き、シルム

2019年12月6日 20:23
北朝鮮で人気のスポーツは?綱引き、シルム

知られざる北朝鮮のスポーツ事情。どんなスポーツが人気なのか取材しました。

朝鮮中央テレビで放送されているのは“綱引き”。綱引きは北朝鮮のスポーツイベントで頻繁に行われていて人気を集めています。今年9月には、綱引きの科学映画を放送。CGなどを使い、綱引きを科学的に分析しています。

日本の相撲に似たシルムという競技は、組み合った状態から試合開始し、倒した方が勝ちというルール。ユネスコ無形文化遺産にも選ばれた歴史のあるスポーツです。

5年前、アントニオ猪木さんが平壌で主催したプロレスイベントでは、2万人の市民が熱狂しました。

テレビでは試合の映像だけでなく…

「敬愛する金正恩元帥様の指導のもとで、国中にスポーツの熱風が吹き荒れています」

スポーツ振興に対する金正恩委員長の指導力を伝える記録映画も放送されています。

テレビで放送されるスポーツの世界大会は、北朝鮮の選手が優勝した大会が多く、愛国心や政権への求心力を高める狙いもあるとみられます。

今年4月の平壌マラソンには、日本を含む約1000人の外国人ランナーが参加。経済制裁が続く中、外貨を獲得する貴重な機会となりました。

スポーツは、国民に愛されている一方、その背景には政治的な思惑も見え隠れします。


【解説】日本テレビ国際部 小林弘和記者


――この取っ組み合いのようなこのスポーツ、私は初めて見ました。

そうですね、シルムという日本での相撲のような競技になりますね。

もちろん北朝鮮ではサッカーなどおなじみのスポーツもあるのですが、こういう伝統スポーツもあります。実は、このシルムというのは、去年、韓国と共同でユネスコの無形文化遺産にも登録されているんです。そういう伝統あるスポーツなんです。各地域とか団体の代表同士が一堂に会して、優勝目指して戦うといった形で、定期的に大会が開かれているようで、現地ではなじみのスポーツのようです。

あとは、綱引きです。これも現地で人気があるようで、北朝鮮のテレビを見ていますと頻繁に綱引きの映像を目にする機会があります。今年9月に放送された「我が民族スポーツ綱引き」という科学映画では、CGなんかを使って体の角度などを分析して、どうやったら力が入るかと紹介していたり、綱引きによって筋肉が強化され鋼のような肉体になると、その効能をアピールしていて、こういうところからも関心の高さがうかがえると思いました。


――かなり本格的に取り組まれていますよね。スポーツが盛んだというのは伝わったんですが、実際に世界で活躍している選手はいらっしゃるんですか。

はい、私が注目していますのが、リオデジャネイロオリンピックの時に、体操の種目別跳馬で金メダルを取ったリ・セグァン選手という選手がいまして、白井健三選手らを抑えて金メダルを取りました。世界で最も難しいとされる2つの技を持っていまして、その名前がリ・セグァンという技とリ・セグァン2という技なんですが、
これを決めて金メダルを取りました。来年この方は、35歳なんですが、もし東京オリンピックに出てきたら、日本にとっては怖い存在になるのかもしれないです。


――そして小林さんは実際に北朝鮮にも行かれたことがあるということですが、どんな感じでしたか。

特に北朝鮮のスポーツ施設などを見てまわったのですが、テコンドー専用の施設で板を割ったり、形を見させていただいたりしました。あと印象深かったのは、地元の学校に取材した時に、校舎のすぐ近くに真新しいサッカー場のようなものが併設されていて、子どもたちが練習をしている姿も目にしました。全体的に施設が非常に整備されていて、スポーツ振興に力を入れているという印象を受けたのをよく覚えています。


――金正恩委員長ご自身もスポーツは好きなんですか。

そうですね。実際、政権発足直後の2012年に、国家体育指導委員会という組織を立ち上げるなどスポーツに力を入れていることがうかがえますね。

あとよく話題になるんですが、金委員長はバスケットボール好きでも知られています。アメリカの元有名バスケットボール選手のデニス・ロッドマン氏と去年、バスケットボールの試合を一緒に観戦するなど親密なことでも知られています。さらに、その他の様々なスポーツの促進にも取り組んでいて、記録映画も放送していて、「敬愛する金正恩元帥様の指導のもとで、国中にスポーツの熱風が吹き荒れています」といったナレーションが流れるなどしています。

こういったことから見えてくるのはスポーツ観戦したり参加したりして、スポーツを楽しむという点では北朝鮮も他の国と変わらないと思います。しかし北朝鮮の場合、政権の求心力を高める手段という意味合いも持っているのが北朝鮮ならではといえるかもしれません。


――北朝鮮では活躍した選手にちょっと豪華なプレゼントをするというのも聞いたことがあるのですが。

かつてはですね、世界陸上の女子マラソンで優勝した北朝鮮の選手に、当時の金正日総書記からベンツと高級マンションが贈られたという例もあります。現在の金正恩委員長も、例えば2014年のアジア大会で優勝した女子サッカーチームに祝賀会を直々に開いたこともありました。

こういった様々な事例があるんですが、いずれにしても金正恩政権にとってはスポーツが重要な意味合いを持っているということがうかがえます。


――スポーツと政治のつながりが少し見えますね。この背景には政治的な思惑もあるということでしょうか。

そうですね、そう言っていいのではないかと思います。わかりやすい例が、オリンピックで韓国と北朝鮮の選手が統一旗を持って入場行進したシーンなんかも記憶に新しいと思います。


――経済的な面でも意味がありますか?

そうですね。そう言って良いと思います。例えば、今年4月に行われた平壌マラソンですが、そこに日本人を含め約1000人の外国人ランナーが参加しました。経済制裁が続く中ですが、こういったスポーツの大会が貴重な外貨獲得の手段という意味合いを持っているといえるのではないかと思います。

【the SOCIAL viewより】