ロシア“軍事活動の縮小”発表も…キーウ市長「死者が出続けている」
29日のウクライナとの停戦協議後、ロシアは、首都キーウ周辺での軍事活動の大幅な縮小を発表しました。この約束は守られているのでしょうか。街では、今も砲撃が続いているといいます。一方で停戦協議が再開されるという新たな動きもみられます。
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30日、黒煙が上がっていたのは、ウクライナの首都キーウ近郊。街は甚大な被害を受けていました。
見るも無惨な姿となっていたのは、ロシア軍の砲撃を受けたという学校です。砲撃後の学校内にいた男性は、「学校には子供とその親が隠れていましたが、生きています。学校内はもう壁しか残っていません。いつか建物が崩れるでしょう」と話しました。
首都キーウ周辺で、軍事活動の大幅な縮小を発表したロシア。しかし、キーウの市長は30日、「一晩中、ロシアの無謀な攻撃が続いている。死者が出続けている」と述べました。
実際、キーウの中心部でも30日、爆発音が何度も響き渡っていました。現地で取材を続けるジャーナリストの佐藤和孝さんは──
佐藤さん
「こんなすごい砲撃戦のような音、聞いたの初めて。イルピンの方向」
キーウ近郊のイルピンは、ウクライナがロシア軍から奪還した街の1つですが、30日も砲弾が飛び交っていました。イルピンの市長は30日、200人~300人の市民が亡くなったと発表しています。
ロシアがウクライナに侵攻してから31日で5週間。ロシアの支配地域は拡大したものの、ウクライナも一部で攻勢に転じています。
アメリカ国防総省による最新の分析では、キーウ周辺にいたロシア軍部隊のうち20%近くが他の地域に再配置され、一部はベラルーシに入ったとしました。
ウクライナのゼレンスキー大統領は、自身のFacebookで日本時間31日、次のように述べる動画を公開しました。
ゼレンスキー大統領
「(ロシア軍を)我々が追い出したのだ。同時に(東部の)ドンバス地域での新たな攻撃のため、ロシア軍が集結していて、我々はそれに備えている」
5000人もの犠牲者が出ている南東部のマリウポリ。ロイター通信は、ウクライナ大統領府顧問の話として「市の半分がロシア軍に制圧された」と報じました。
市民
「料理をここでしています。水もガスもないので」
市民
「この状況がいつまで続くの?体を洗う場所すらない」
ライフラインが絶たれ、31日現在も、市民10万人以上がとどまっています。
マリウポリから200キロ離れたザポリージャには、多くの人が避難してきました。
マリウポリからの避難者
「マリウポリはもうない。(ロシア軍に)破壊されている」
4人の我が子とともに避難してきた女性は──
マリウポリからの避難者
「夫が帰ってくることを願っています。夫なしでどうやって生きていけばいいか想像がつかない」
街の病院には、“戦争”に巻き込まれた子供たちが入院していました。
子供
「パパー。パパは向かってるの?パパはどこ?来るの?」
病院スタッフ
「パパは来ますよ。大丈夫だよ」
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一刻も早い「停戦」が望まれる中、新たな動きもありました。ウクライナ代表団の1人は、4月1日にもオンラインで停戦協議が再開すると明らかにしました。
兵士や民間人など多くの命が奪われた5週間。ロシア軍の苦戦も伝えられる中、戦地におけるあらゆる情報がロシアのトップ、プーチン大統領に“正しく伝えられていない”との分析があります。
アメリカ・ホワイトハウス ベディングフィールド広報部長
「プーチン氏は、側近からロシア軍の戦況がいかに良くないかや、経済制裁による影響について、誤った情報が伝えられている。側近らはプーチン氏が怖くて真実を伝えられないからだ」
側近は“プーチン大統領への恐れ”を抱いているといいます。
ベディングフィールド広報部長は、「プーチン氏が軍に欺かれたと感じていて、軍幹部との間に継続的な緊張関係が生まれている」とも指摘しています。