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2020年は宇宙の商業利用元年に!?

2020年1月3日 5:50

「2020年、人類の宇宙飛行はまさに新たな時代を迎える」―2019年12月、NNNの単独インタビューに応じたNASA(=アメリカ航空宇宙局)のブライデンスタイン長官の言葉だ。長官はさらに、「2020年、私たちは初めて国際宇宙ステーション(=ISS)にビジネスとして人を打ち上げる」と続けた。

長く宇宙開発を一手に担ってきたNASAは今、次世代の宇宙開発で民間企業の力を大いに活用する方向に舵(かじ)を切っている。2014年、NASAは地球の低軌道上を周回する国際宇宙ステーションに宇宙飛行士を運ぶ宇宙船の開発を、アメリカの民間企業2社に依頼した。

電気自動車テスラで知られるイーロン・マスクCEOが立ち上げた新進気鋭の宇宙企業「スペースX」と、スペースシャトルや国際宇宙ステーション建設に携わってきた宇宙開発の老舗企業「ボーイング」だ。

NASAが民間企業に宇宙船開発を依頼した狙いは、ひとえにコストダウンだ。2011年のスペースシャトル退役以降、宇宙飛行士を自前で打ち上げる手段を失ったアメリカは、ロシアの宇宙船ソユーズの座席を購入して宇宙飛行士を国際宇宙ステーションに運んできた。

ただ、その価格は年々上昇し、NASAの頭痛の種となっていた。そこで出てきたのが、「開発を競争原理が働く民間企業に任せよう」という発想だ。

民間企業にとっては、NASAの支援を受けながら宇宙船の開発を進めることで、将来的な宇宙旅行ビジネスを優位に進めることができる。また民間企業は、ビジネス的観点からできる限り安価で宇宙に人を運べる手段を開発するため、競争原理も働き、おのずとコストダウンがはかれるというからくりだ。

実際、2社が開発中の新型宇宙船や打ち上げ用のロケットは繰り返しの使用が可能で、打ち上げ単価が従来より格段に抑えられるとされている。また、開発中の宇宙船のコックピットを見てみると、ボタンの数はスペースシャトル時代の3000個から大幅に減り、多くの動作を自動で制御できるようになっていて、宇宙飛行士ではない一般人が宇宙旅行で使えることを強く意識した設計になっている。
月や火星といった、より遠い場所への探査に予算を集中投下したいNASAと、将来的な宇宙旅行ビジネスを進めたい民間企業がまさにウィンウィンで取り組んでいる状態になっているのだ。

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【背景にはトランプ政権の思惑も】
ここに来てNASAが宇宙開発を積極的に進める理由には、トランプ政権の強い意向が働いているといっても過言ではない。1969年に初めてアメリカ人宇宙飛行士が月面に降り立ってから50年。NASAのブライデンスタイン長官は「次に月面に着陸するのもアメリカ人でなければいけない」と、常々、口にしている。

トランプ政権は当初の予定を大幅に前倒しし、2024年までに月面にアメリカ人宇宙飛行士を立たせる「アルテミス計画」を実現するようNASAに強く求めている。

アメリカ人の手でアメリカ人宇宙飛行士がアメリカ本土から宇宙に旅立ち再び月面に降り立つことは、まさにトランプ大統領の「メイク・アメリカ・グレート・アゲイン」にも合致し、確かに国威発揚にもつながる。

ただ、背景にあるもう1つの理由は、急速に宇宙開発を進める中国への危機感だ。アメリカは、様々な分野で覇権争いが続く中国が宇宙の軍事利用でも大きな脅威になるとみている。

実際、NASAのブライデンスタイン長官はNNNのインタビューに対し「宇宙開発は探索という観点のみならず、国家安全保障という意味でも前進させることが重要」と語り、トランプ政権が宇宙開発を予算面でサポートする大きな理由は安全保障にあるとの考えを示している。

2019年12月には、トランプ大統領が国防予算の大枠を定めた国防権限法に署名し、「宇宙軍」の発足も決まった。署名に際しトランプ大統領は「宇宙は最も新しい戦闘領域だ」「我々が宇宙空間を主導していく」などと述べ、中国とは名指ししなかったものの強い対抗意識を示している。

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【2020年には何が?】
では、実際2020年にはどんな動きが予定されているのか。新型宇宙船を開発中のスペースXとボーイングはともに、来年前半にも宇宙船の有人飛行テストを実施したいとしている。

実現すれば、2011年以来の「アメリカの手によるアメリカ本土からのアメリカ人宇宙飛行士の打ち上げ」の再開を意味し、アメリカ国内は大変な盛り上がりになることが予想される。テストが成功すれば、いよいよ本格的に民間企業の宇宙船を使った国際宇宙ステーションへの宇宙飛行士打ち上げが始まる。

その最初のミッションには日本人の野口聡一宇宙飛行士が搭乗することが決まり、野口さん本人も2019年12月の時点で、「2020年夏から秋には宇宙に行けるのでは」とNNNに語っている。

さらにNASAは、早ければ2020年から国際宇宙ステーションを民間にも開放し、民間人が宇宙に滞在して生産や広告などの企業活動を行えるようにする計画を打ち出している。

そして2020年6月には月面着陸に使用する宇宙船の無人試験打ち上げ、7月には火星の探査を行う無人探査機を打ち上げ、火星の探査も本格化させる予定だ。

一方で、同じく2020年に行われる大統領選の行方も宇宙開発に大きな影響を与える。トランプ大統領という最大のサポーターが再選を逃せば、アルテミス計画の凍結も現実味を帯び、NASAの宇宙開発計画は大きな見直しを迫られることが確実視されている。

民間の力を活用しつつ、停滞していた宇宙開発を一気に加速させることができるか。2020年はまさに「次世代の宇宙開発」を占う重要な年になる。