「私は女の子だよ」…子どもが自分で選ぶジェンダー 米で広がる"新たな子育て"
米・メリーランド州で出会ったのはアーロさんと、5歳のスパロウさんの親子。実はアーロさんは、ジェンダーに関する"新しい育て方"で、スパロウさんに向き合っています。
アーロさん
「生まれた時に、スパロウのジェンダーを決めませんでした」
「(男の子・女の子でなく)ただ”赤ちゃん”と呼んで、今後、自分で自分のジェンダーを決めてもらいます」
”男の子”とも”女の子”とも決めず、子どもが自分でジェンダーを選び取るまで、見守るというのです。こうした手法はアメリカで「ジェンダー・クリエイティブな子育て」と呼ばれ、ここ数年で徐々に関心が高まっています。
アーロさんは、おもちゃや服など、子どもに与える物を"男の子向け""女の子向け"と分けて考えないことが重要だといいます。
アーロさん
「恐竜(のぬいぐるみ)は男の子のものだと考える親もいます」
「でも、スパロウは恐竜にピンクのドレスを着せたんです」
「男の子のものと女の子のものを合体させたような感じですよね」
さらに、服についてもアーロさんは「『男の子の色』『女の子の色』でなく『明るい色』『暗い色』」と考えています。
アーロさん
「ピンクは女の子の色、となりがちですが、私たちは男の子がピンクとオレンジの半ズボンをはきたいなら"どうぞ"と(言います)」
「男の子向け」と思われがちな"ヒーローものの服"も、女性のヒーローが描かれているものを選ぶことで、ジェンダーのバランスを取っているといいます。「男の子向け」「女の子向け」という”固定観念”を取り払い、子どもがジェンダーを自然に選び取れる環境を整えるのです。
きっかけは、上の子を育てた経験にありました。
現在12歳のヘイゼルさん。アーロさんは当初、生まれた時の体の性別で育てましたが、ヘイゼルさん自身はその後、自分の性別を男性・女性という枠組みに当てはめない「ノンバイナリー」を選択したのです。
アーロさん
「親が子どものジェンダーを決めたから間違えた。次は親が選ばないようにしようと」
スパロウさんは5歳になり、「私は女の子だよ」と話すなど、女性として見られることをより好むようになりました。アーロさんは、スパロウさんがジェンダーを選ぶ時期にさしかかったと感じています。
アーロさん
「ジェンダー・クリエイティブな子育ては、子供を一人の人間として扱うひとつのやり方なんです」
一方、専門家からは指摘も出ています。
神経科学が専門・エリオット教授
「ジェンダーで人が区別されるという社会で、自分のジェンダーを決めずに育つのは、子どもたちにとって難しい挑戦です」
実際、インターネット上では一家への中傷もありました。さらに、これまで住んでいた南部・フロリダ州でジェンダーの多様性を抑圧する政策が相次いで打ち出されたため、一家は7月に、ジェンダーの多様性尊重を掲げるメリーランド州に引っ越しました。
引っ越しの翌日、アーロさんは早速、多様な性のあり方をアピールする地元のイベントを訪れました。新たな町でも、自身の子育てについて、積極的に発信するつもりです。
アーロさん
「子どもが自分らしく生きることが普通になれば、社会はもっと良くなります」