北朝鮮のYouTube 新たな体制宣伝?
知っておきたいデータや情報をひもとく「input」。今回は「ひと味違った視点から北朝鮮の今に迫る“NKウオッチ”」。日本テレビ国際部・伊澤璃穂記者に聞いた。
今回ご紹介するのは、「北朝鮮のYouTube展開」です。
――北朝鮮とYouTubeとは、あまり結びつかない組み合わせですね。
そうですよね。まずはこちらの動画をご覧ください。
北朝鮮のYouTube(1)
リ・スジンちゃん「こんにちは。私はリ・スジンです。7歳です。今日から私の動画ブログを始めます。チャンネル登録してくださいね~」
今年4月に配信された動画で、この女の子は7歳だといいます。
――7歳ですか。北朝鮮というと、軍事パレードなどのイメージが強いため、こういった映像は少し意外に見えますね。
そうですよね。他にも、そろばんや小学校に通う様子などもあります。
また、別の動画では平壌の街中の様子が紹介されていますが、案内役の女性のリポートに注目してください。
北朝鮮のYouTube(2)
ウンアさん「みなさん、こんにちは。この4月の天気が、少しでも皆さんを元気づけられたらいいと思います」
――流ちょうな英語を話されていますね。
動画は字幕つきで、外国の人が見ることを強く意識している宣伝用の動画とみられます。
――話し方がやわらかく、ソフトな印象も受けました。
YouTubeでは少なくとも2011年ごろから動画配信が確認されていますが、今年から英語が使われるなど変化があらわれています。
この2つの映像を比較してみると、国営テレビでは屋内で女性キャスターがどこか堅苦しい雰囲気で原稿を読み上げるのに対し、YouTubeでは屋外から英語でリポート。よりソフトに見えるよう工夫していることがうかがえます。
――親近感が湧く映像だな、と思いました。
変化は別の形でも見られます。最近、金正恩委員長の祖父にあたる、金日成主席のドキュメンタリー動画が削除されたのです。
――なぜ削除されたのでしょうか。
アメリカの研究機関は、プロパガンダ色の強い動画を削除してソフト路線を強化したと分析。フォロワーを増やす狙いがあると指摘しています。
――こうした動きにはどのような狙いがあるのでしょうか。
北朝鮮の専門家は、「体制宣伝」の延長とみています。北朝鮮をめぐっては核ミサイル関連などネガティブに報じられることが多い中で、北朝鮮の良い面だけを直接国外の人に見てもらおうと、YouTubeを活用し始めたと考えられます。
――良い面だけ、というのがポイントになるのでしょうか。
そうなのです。しかし、ソフトな動画の中にも随所に「体制宣伝」がちりばめられていて、新しい対外戦略に力を入れていることが分かります。今後、どのような動画が配信されるか注目されます。
【the SOCIAL inputより】