日朝がモンゴルで接触? “拉致問題”楽観できず…外交関係者「北朝鮮は弱い政権を相手にしない」 “起死回生の一手”首脳会談は
日本と北朝鮮の代表団がモンゴルで会談した──。韓国の大手紙がこう大きく報じましたが、岸田首相が意気込む「直轄のハイレベル協議」とは別のルートであるという見方があります。拉致問題の進展に向け、日朝首脳会談の実現につながるのでしょうか?
藤井貴彦キャスター
「韓国の大手紙『中央日報』が、日本と北朝鮮の代表団が5月中旬、モンゴルのウランバートル近郊で会談したと、岸田首相や金正恩総書記の写真を使って大きく報じました」
「日本と北朝鮮といえば、最大の懸案は拉致問題の解決です。この報道が事実だとすれば、岸田首相と金正恩総書記との首脳会談に向けた動きと言えるのでしょうか?」
「これがまさに首脳会談に直結するかというと、現時点では疑問が残るというのが正直なところです。岸田首相はかねて、日朝首脳会談の早期実現に向けて『首相直轄のハイレベルで協議を進めていく』としていて、さまざまなルートで接触を試みようとしています」
「その中で今回のルートについて、林官房長官は『事柄の性質上、答えは差し控える』と肯定も否定もしませんでした。一方である政府関係者は、首相直轄の正規のラインとは違い『連動したものではない』という見解を示しています」
「また、記事には日本の代表団に政治家も含まれていたと書かれています。独自のネットワークを持つ政治家が個別に北朝鮮と交渉することはこれまでもありました」
「ただ、これまで北朝鮮との交渉に関わった外交関係者は『政治家ルートで成果があったためしがない』と否定的です」
藤井キャスター
「いくつかあるルートの1つだということですが、その割には、韓国のメディアが随分大きく報じています。理由はあるのですか?」
小栗委員長
「日本テレビの横田ソウル支局長は、韓国側の警戒の表れだとみています。今の韓国の尹政権は、北朝鮮に非常に厳しい姿勢です。北朝鮮側も韓国を『第一の敵国』とするなど、関係はあまり良くありません」
「そうした中で韓国としては、日本が北朝鮮と近づくのを警戒しているということです。今回の報道では、日本が経済的な支援を求められることも示唆する内容もあり、日本側をけん制する考えがあったとみられます」
藤井キャスター
「実際に日朝首脳会談があるのかどうか、見通しはどうなのでしょうか?」
小栗委員長
「拉致被害者家族会は、高齢になっている被害者の親世代が存命のうちに、被害者全員の一括帰国を求めるとしていますが、なかなか楽観できる状況ではありません」
「ある外交関係者は『一般論で言えば、北朝鮮は弱い政権は相手にしない』と述べ、今の岸田政権のもとでは交渉が簡単ではないという見通しを示しています」
「ただ岸田首相としては、政権の起死回生の一手としても日朝首脳会談に強い意欲を示しています。ある政権幹部は『今のこう着状態は打破しないといけない。首脳会談は必ず実現したい』と意気込んでいます」
シシド・カフカさん(ミュージシャン・『news zero』木曜パートナー)
「本当に難しい問題だなと思います。ただ、単純に拉致問題だけを見つめて解決することはできないものかと思わずにはいられません。ご家族の皆さんに、せめて何かしらの情報だけでも届けてほしいですよね」
藤井キャスター
「仮に今回の報道が事実だとしても、拉致問題が大きく進展するわけではないかもしれませんが、拉致被害者のご家族はご高齢の方が本当に増えています。一刻も早い解決に向けて本気で取り組んでもらいたいところです」
(6月13日『news zero』より)