西側諸国に“支援疲れ” 避難所は削減…満員状態 攻撃強まる中…ウクライナへ戻る人も
ロシアのウクライナ侵攻から1年となるのを前に、アメリカ、ロシアの首脳が相次いで演説しました。バイデン大統領は改めて、ウクライナへの支援での結束を訴えましたが、戦争が長期化する中、”支援の限界”も表面化しています。ポーランド第二の都市クラクフでは、財政負担に耐え切れず避難所が削減され、市民からは支援に反対する声も聞かれました。
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ロシア・モスクワで21日、侵攻から1年を前にプーチン大統領が演説を行いました。
ロシア プーチン大統領
「この戦争を起こしたのは西側諸国であり、ロシアは常に戦争を止めるために尽力している」
こう述べた上で、ウクライナ侵攻を改めて正当化しました。
その約7時間後、アメリカのバイデン大統領が、訪問中のポーランド・ワルシャワで演説をしました。
アメリカ バイデン大統領
「ウクライナでロシアが勝利することは決してない、決してだ」
プーチン大統領を名指しして非難しました。さらに、バイデン大統領が訴えたのが、ウクライナ支援での各国の結束です。背景にあるのが、西側諸国の“支援疲れ”です。
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19日に訪れたのは、ウクライナとポーランドの国境・メディカです。侵攻から、まもなく1年がたつ今も、冷たい雨の中、避難してくる人の姿がありました。
ウクライナから避難してきた人
「計画停電が続いているので避難してきました」
「(ウクライナは)いつミサイルが飛んできてもおかしくない。リスクが大きすぎます」
ウクライナの人々は、今も続々とポーランドに避難してきますが、侵攻が始まった当初、支援物資を配るテントが立ち並んでいた国境地帯は、19日には支援者の姿はほとんどなく、ひっそりとしていました。
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ポーランド第二の都市クラクフで、市が運営する避難所を訪れると、ここで暮らす人の多くは、幼い子どもを連れた女性や高齢者でした。
避難所の担当者
「戦争が始まってから避難所を5か所用意しましたが、今はここ1か所です」
市は財政負担に耐え切れず、5か所あった避難所を1か所に削減しました。そのため、この避難所では満員の状態が続いています。中にはウクライナから避難後、ポーランドで出産したという女性もいました。「支援がなくなったら?」と尋ねると、女性は「どうすればいいか全く分かりません」と不安をのぞかせました。
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記録的な物価高となっているポーランド。市民は苦しい生活を強いられていて、街頭の募金活動でも立ち止まる人の姿はほとんどありません。
ポーランド・クラクフ市民
「支援には反対です。ポーランド国民に対する負担が大きすぎる」
「過剰な支援です」
避難者が無料で利用できた宿泊施設も、妊婦や高齢者を除き、来月から一部、自己負担が求められることになりました。
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こうした中、ウクライナではロシアによる攻撃が再び強まっています。しかし、ウクライナに向かうバスには連日、多くの人の姿がありました。
ウクライナに戻る親子
「今後はアパートの家賃を負担しなければならなくなりました。ポーランドとウクライナで、2つのアパートを維持することはできません」
子どもが「(戻るのは)少し怖い」と胸の内を明かしました。
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一方で、ウクライナに戻ることができない人もいます。避難所でスタッフとして働くイレーナさんは、7歳になる娘とウクライナの南部ミコライフ州から避難してきました。
ウクライナから避難してきたイレーナ・カニュクさん
「ミサイルを落とされ、よく爆発音が聞こえていました。私たちの街はもうありません。全部、破壊されました。食べ物も水もなく最悪な状況でした。雨水をためて飲んでいました」
イレーナさんは、目の前で知人をロシア軍に殺害され、その記憶がよみがえるウクライナに戻ることはできないといいます。
ウクライナから避難してきたイレーナ・カニュクさん
「故郷には帰れません。娘にあの場所を見せたくない」
居場所を失うかもしれないという不安の中、避難者は侵攻から1年を迎えようとしています。