クレムリンに“無人機” ロシアは「テロ未遂事件」として捜査 3つの可能性が…
モスクワ中心部にあるロシア大統領府「クレムリン」で3日に起きた無人機によるとされる攻撃について、ロシア側はテロ未遂事件として捜査を始めたと発表しました。一方、ウクライナ南部ヘルソン州では3日、ロシア軍による大規模な砲撃が行われ、4日未明には首都キーウや南部オデーサなどが無人機やミサイルで攻撃されました。
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ロシアの政治の中枢「クレムリン」。無人機によるとされる攻撃の翌日の4日に取材しました。
記者(ロシア・モスクワ、4日)
「観光客の方々もたくさんいますね。赤の広場は戦勝記念日に向けて今、立ち入り禁止なんですけれども、特に警戒態勢が厳しくなったという感じはしません」
3日未明、クレムリンの上空に突如、無人機が飛んできました。ロシア大統領府は、ウクライナの無人機2機がクレムリンを攻撃しようとしたとして強く非難。「プーチン大統領の命を狙ったテロ行為だ。報復措置をとる権利を持つ」と主張しています。
ウクライナの反転攻勢が始まったのでしょうか。
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ロシアは今月9日に「戦勝記念日」を迎えます。パレードが行われるクレムリンの横の「赤の広場」では、先月27日から立ち入りができなくなっていて、国民の多くは無人機によるとされる攻撃について、知りませんでした。
知らなかった市民
「コメントするのは難しいです。今はあらゆるニュースは信頼しない方が良いと思います」
動画を見たという市民
「我が国は愚かでない人たちが運営しているので、賢い決定が下されると思います」
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無人機は「クレムリン」の上空に突如、飛んできて、その後、火花をあげて墜落しました。ロシアの捜査当局はテロ未遂事件として捜査を開始したと発表しました。
一方、ウクライナのゼレンスキー大統領は関与を否定しました。
ウクライナ ゼレンスキー大統領(フィンランド・ヘルシンキ、3日)
「プーチンやモスクワを攻撃しない。我々は自分たちの領土で戦っている」
真相は一体どこにあるのでしょうか。
アメリカのブリンケン国務長官は、攻撃が誰によるものかは「検証できる情報がない。分からない」と述べています。また、アメリカの政策研究機関「戦争研究所」は「2機の無人機が何層もの防空網をくぐり抜け、クレムリンの真上で爆発する劇的な映像が捉えられたことは、極めてありそうもない」とし、ロシアがより広範囲の社会的な動員を行うための自作自演の可能性を指摘しました。
外交・安全保障に詳しい専門家は3つの可能性を指摘します。
笹川平和財団 小原凡司上席フェロー
「1つはウクライナ側が仕掛けた可能性。2つ目は、ロシア側の中でもプーチン政権が自作自演で行った可能性。3つ目は、ロシアの中でも反プーチン勢力が権力闘争などの理由で行った可能性。既にウクライナ側が『大規模な反攻を開始した』という情報もあり、現在、ロシア軍は自ら主導的に作戦を展開できる状況にはないと思う」
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ウクライナは領土奪還に向けた「反転攻勢の準備が、最終段階にある」と述べています。
ウクライナ ゼレンスキー大統領(先月30日・大統領府SNSより)
「重要な戦闘がまもなく始まる」
クリミア半島やロシア領内などでは最近、ウクライナの関与が指摘される攻撃や爆発が相次いでいます。こうした中、ロシアメディアは4日、ロシア南部・クラスノダール地方の石油精製施設で無人機攻撃があり、火災が発生したと報じました。
ロシアの民間軍事会社「ワグネル」創設者のプリゴジン氏は3日、ウクライナによる反転攻勢は「実質的に既に始まっている」との見方を示しました。
こうした中、ウクライナ南部のヘルソン州では3日、ロシア軍による大規模な砲撃が行われ、地元当局は23人が死亡し、46人がけがをしたとしています。4日未明には首都キーウや南部オデーサなどに向け、無人機やミサイル攻撃が行われました。ウクライナ空軍は「敵の無人機24機のうち、18機を撃墜した」としています。
ウクライナ情勢は予断を許さない状況が続いています。