ウクライナの人権団体などにノーベル平和賞 “戦争犯罪を記録する活動を評価”
ことしのノーベル平和賞に、ロシアとウクライナそれぞれの人権団体とベラルーシの人権活動家が選ばれました。ウクライナの団体については、ロシア軍の戦争犯罪を記録する活動を行っているなどとして評価しています。
ノーベル平和賞に選ばれたのは、ウクライナの人権団体「市民自由センター」、ロシアの人権団体「メモリアル」、ベラルーシの人権活動家アレス・ビアリアツキ氏です。
受賞理由について、ノルウェーのノーベル委員会は、「長年にわたり権力を批判する権利と市民の基本的権利の保護を推進した」「戦争犯罪、人権侵害や権力の横暴を記録するため特筆すべき努力をした」「平和と民主主義のための市民社会の重要性を示した」と述べています。
ウクライナの「市民自由センター」については、ロシアのウクライナ侵攻後、ロシア軍による市民の虐殺など戦争犯罪を記録する活動を行っているとして、「罪を犯した者たちに責任をとらせるという意味で、先駆的な役割を果たしている」と評価しました。
ロシアの人権団体「メモリアル」については、ロシア当局から“外国の手先”として様々な圧力をかけられ去年末に解散を命じられたことや、チェチェン紛争でのロシア軍などによる戦争犯罪を調査する活動のなかで、メンバーが殺害されたことなどを紹介しました。
そのうえで、「軍国主義に対抗し、人権と法の支配に基づく政治を推進する取り組みの最前線に立ってきた」と評価しました。
ベラルーシの人権活動家アレス・ビアリアツキ氏については、1980年代のベラルーシでの民主化運動において、自ら立ち上げた団体を通じて民主化デモで投獄された人たちを支援し、当局の拷問を記録してきたと紹介しています。
また、2020年の反政府デモで拘束され、現在も拘束が続いているとして、「多大な困難にもかかわらず、人権と民主化のための戦いにおいて一歩も引いていない」とたたえています。
ノーベル委員会は3者に平和賞をおくることで、「ロシア・ウクライナ・ベラルーシでの、人権・民主主義・隣国との平和的共存を擁護する人たちをたたえたい」としています。
ロイター通信は、「この賞は、多くの人に、ロシアのプーチン大統領とベラルーシのルカシェンコ大統領への非難として受け取られ、ここ数十年で最も政治的な論争になるだろう」と分析しています。