米国で“アジア系ヘイト”5倍に急増 なぜ
アメリカではいま、アジア系住民を狙ったヘイトクライムが増えています。最新情報をニューヨーク・タイムズスクエアから越智記者が伝えます。
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ニューヨークの中心、タイムズスクエアです。ニューヨークではワクチンの接種が進んで、人出もすごく増えました。一方で問題になっているのが治安の悪化、特に増えているのがアジア系住民を狙った憎悪犯罪、いわゆるヘイトクライムです。
ニューヨーク市警のヘイトクライムを担当する部署のツイッターには、アジア住民を狙った事件に関する情報が連日のように投稿されます。監視カメラが捉えた犯行の瞬間映像も投稿されたりしますが、殴る蹴るといった映像の衝撃もあって、特に女性からは「一人で外を歩くのが怖い」といった声も聞かれます。
個人的には暴力や嫌がらせを受けたことはありませんが、支局の女性スタッフの一人は、日中に街中を歩いている時に、男が後ろからついてきて突然「バカなアジア人め」などという言葉を投げかけられたケースもあります。
日本総領事館からも、在留邦人に対し注意を呼びかけるメールが何度か出されています。実は日本人が襲われるケースも、先月、少なくとも2件起きています。
一つ目は、日本人が地下鉄のホームで見知らぬ男に腕を捕まれ、線路に引きずり下ろされそうになったという事件。もう一つは、走行中の地下鉄車内で、日本人が男に突然殴られてケガをしたというものです。
総領事館は、できる限り地下鉄は利用せず、バスや自転車を利用するよう推奨しています。
私も、地下鉄には乗らないようにしています。また、家族には一人で歩かないようにと伝えていますが、こうした事件は日中の人通りのある場所でも起きていますので、注意のしようがない部分もあります。
アジア系住民を狙った事件は増加傾向にあります。今月9日までの最新統計によると、今年に入ってすでにアジア系住民を狙った事件は81件報告されています。前年の同じ時期は17件でしたので、およそ5倍に急増しているといえます。
増加の背景には「新型コロナウイルス」があるとの分析が目立ちます。ウイルスが中国、つまりアジアから持ち込まれたんだという思いを持つ人がいるという指摘です。
これは、トランプ前大統領がコロナウイルスを「チャイナウイルス」と呼び続けたことも影響しているという見方もあります。
そして、感染防止のために厳しい外出制限を余儀なくされ、職を失った人も多く、そもそもストレスをためている人が増えているという分析もあります。
警察もアジア系の私服捜査員を街中に配備して、犯罪に遭遇した瞬間に逮捕するという、一種のおとり捜査のような手法も導入して捜査していますが、犯罪件数はなかなか減らないのが現状です。
新型コロナの感染が落ち着いてきて、街も前向きなムードが高まる中、犯罪率が低下していくか注目しています。