ナイキの動画話題“海外ルーツ”生きやすく
地球にいいこと、未来のためにできることを視聴者のみなさんと一緒に考える「Good For the Planet」ウイーク。
news every.で取り組んできたSDGs企画。国連が掲げる17の目標のうち、4日は、「人や国の不平等をなくそう」です。日本での“人種差別”などをテーマにし、「ナイキ」が実在のアスリートの証言をもとに作った動画が話題になりました。海外にルーツを持つ人などみんなが生きやすい社会を考えます。
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去年、スポーツメーカー「ナイキ」が公開した動画広告では、ありのままの自分を受け入れられないことに悩む在日コリアンの少女。容姿をからかわれ、傷つく、アフリカ系にルーツを持つ少女。日本で暮らす少女たちが差別やイジメに悩みながらも、スポーツを通じて乗り越える姿が描かれています。
公開されておよそ1週間で、YouTubeでの再生回数は1000万回を突破するなど、大きな反響を呼びました。
街の人にこの動画を見てもらうと――。
学生(21)「共感の方が強い。そういった差別はもう古い考え」
会社員(27)「日本は島国なので人種の多様性に関しては、まだまだ未熟な価値観を持っている方が多い」
会社員(26)「別にいいCMとも悪いCMとも思わない。イジメとか日本に限らずどこの国でもあるような話」
SNS上では、否定的な反応も――。
「日本人を一方的に悪者にするCMで悲しくなりました」
「もうナイキは買わない」
差別の否定やナイキ製品不買の呼びかけなども見られました。
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登場人物と“同じような境遇に置かれた人々”は、どのような思いでこの動画を見ていたのでしょうか…。
在日コリアン3世のプロサッカー選手、安柄俊(アン・ビョンジュン)さん。東京生まれの東京育ちです。Jリーグを経て、2年前からは韓国のプロサッカーリーグでプレーしています。動画は、在日コリアンの友達や家族の間でも、話題になったといいます。
在日コリアン3世・安柄俊選手(31)「ああいうの(在日問題)を題材にしてCMを作ったというのが、少し驚きはありました。自分が幼い時とも多少なりとも重なる部分もありましたし」
子供の頃、朝鮮学校に通いながら、日本のサッカーチームに所属していた安選手。複雑な思いを抱くこともあったといいます。
在日コリアン3世・安柄俊選手(31)「最初の方は自己紹介で自分の名前を言うのが恥ずかしかったり、嫌な思いというかそういうのは本当ごく少数ですけどありました。試合中とかに『こいつ朝鮮人だ』みたいな」
同じ在日コリアンの妻と結婚し、今、3歳と5歳の子供がいる安選手。父親として、子供たちの将来の社会にも思いを巡らせています。
在日コリアン3世・安柄俊選手(31)「自分の子供たちが在日として生まれたのは変えられない事実。それでちょっとした差別を受けたり(日本で)生きていく中でどうしても経験しなきゃいけないことなのかな。多様性みたいなのを許容できる、お互いに尊重して暮らせる社会で自分の子供たちも伸び伸び育ってほしい」
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一方、アフリカにルーツを持つ矢野さん兄弟。日本人の父親とガーナ人の母親のもとに生まれ、それぞれ8歳から3歳の時に、一家でガーナから日本に移り住みました。
兄弟ボーカルユニットとして活動する一方で、長男のマイケルさんは元Jリーガーでミュージシャン。二男のデイビットさんはミュージシャンで大学客員講師。三男のサンシローさんは薬剤師としても働いています。
3人に改めて、動画を見てもらうと…。
矢野マイケルさん(42)「僕からすると、『今頃か』という感じ小さい時からずっと待っていた。自分しか分からない気持ちを日本中の人たちに話すわけにもいかないし、メディアを通してCMでやっていただいてすごくうれしいです」
Q.日本に人種差別はあると思いますか
矢野マイケルさん(42)「あります。あると思います。どこの国でもあると思います」
矢野デイビットさん(40)「時代の流れを感じますし、この後がすごく大事だなと思います」
サンシローさんが気になったシーンは…。
矢野サンシローさん(37)「髪の毛をくるくるって囲まれてやるシーンを見て、あーあるなと」
薬局で働いているサンシローさん。周りの人たちが、見た目の違う自分たちを受け入れるようになってきたと感じています。
矢野サンシローさん(37)「自分が薬局で薬を渡す時、やっぱり見た目が違うとみなさん感じてると思うんですよ。普通に日本語で話してコミュニケーションを取った時に大半の人が何もそこへ対して突っ込んでは来ないんですよね」
大半の人が、壁を作らず、普通に接してくれることを前向きに受け止めています。
外国にルーツがある人が増えている日本。新たに生まれる子供の50人に1人は、両親のどちらかが外国籍です。多様化が進む社会を変えていく第一歩として、デイビットさんは、こう訴えます。
矢野デイビットさん(40)「これ(広告動画)は1つのきっかけだと思うんですよ。僕ら人間だし完璧じゃないし。世界をこう変えるって言ってもすごく難しくて。でも僕らは自分自身の考え方や感じ方とか、自分自身の行動からは変えることはできる。そこからスタートすることでいいんじゃないのかな」
矢野マイケルさん(42)「Change!(チェンジ)」
皆が生きやすい社会とは何なのか、1人1人が考える時が来ています。