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宝くじやエキストラが人気 深刻な就職難で“一発逆転”狙う中国の若者

2024年7月17日 20:04
宝くじやエキストラが人気 深刻な就職難で“一発逆転”狙う中国の若者

中国で急速に売り上げを伸ばしている宝くじ。いま各地で品切れ状態となっています。背景にあるとみられるのが、中国の若者の失業率の高さです。仕事につけない若者たちが向かう先を探りました。

   ◇

中国・北京のある場所で、いま“異変”が起きていました。

記者が訪れたのは、宝くじ店です。

記者
「スクラッチくじはある?」

店員
「ないよ。品切れです」

別の店でも…

記者
「スクラッチの宝くじは売り切れと書いてあります」

中国では去年、宝くじの売り上げが前年よりも4割近く増え、日本円にして12兆円を超える“宝くじブーム”に。中でも“スクラッチくじ”が各地で品切れ状態となっているのです。

ようやく“スクラッチくじ”を置いている店を見つけると、目立つのは若者の姿です。

お客さん
「外れた」
「私も」

実はいま、宝くじの購入者の約8割が、18歳から34歳の若者なのです。なぜ、若者が夢中になっているのでしょうか。

お客さん
「気分が良い時も、悪くなった時も買う。ただ楽しみたいだけ」

うさを晴らすためという若者たち。

中国では、若者の失業率が13%を超え、大卒の就職内定率は5割を下回る水準に。空前の宝くじブームは「働くより一獲千金を」と、多くの若者が“現実逃避”に走ったためとの見方も出ています。

スクラッチくじの品薄は、若者の行動を危惧した中国政府が、ひそかに販売規制に乗り出したからではないか、との指摘も…。

店員
「6月に国が新しい政策を打ち出したの。理由は知らない。急にスクラッチくじを送ってくれなくなった」

インタビュー中にも…


「スクラッチくじはないの?」

店員
「ないの」

   ◇

15日から始まった中国共産党の重要会議「3中全会」では、中長期的な経済政策などが議論されていますが、大きなテーマの一つが、“若者の失業対策”です。具体的な政策が打ち出されるか、関心が集まっています。

東部の浙江省でも、若者が“一発逆転の夢”を追う場所があります。

柳沢高志記者
「北京の故宮を実際の大きさで再現したセットなのですが、すごいスケールです」

時代劇などを撮影するための巨大なオープンセット。「中国のハリウッド」とも呼ばれる世界最大の映画撮影基地です。いま、中国全土から20万人もの若者たちが集まってきたといいますが、そのワケは…

エキストラを目指す22歳
「エキストラをやりに来たの」

エキストラを目指す22歳
「1か月か2か月やってみて出演の機会があるかどうか試してみる」

大学を卒業したばかりだという2人に、下宿先を案内してもらうと…

エキストラを目指す22歳
「若い人が殺到しているから、ようやく借りられた部屋なの」

月2万円ほどだというアパートの1室。ここで毎日、エキストラの仕事を探すといいます。取材中に届いた荷物は…

エキストラを目指す22歳
「これは私の女優イス。現場で何時間も待たされるから、イスは絶対に必要なの」

炎天下で、待ち時間も長いエキストラ。この街にやってくる若者たちにとって、こうした休憩用の“俳優イス”が必需品となっているのです。

エキストラの仕事、1日の報酬は約2000円。決して高くありませんが…

エキストラを目指す22歳
「ここに来ている人はみんな誰もが、役者になりたいという夢は持っている」

エキストラを目指す22歳
「自分の姿をスクリーンで見てみたいの」

一方、“本音”も…

エキストラを目指す22歳
「就職活動は…すごく難しくて、プレッシャーも大きい」

就職活動がうまくいかなかったという2人。息抜きもかねて、ここにやってきたといいます。

──将来に対してどう思っている?

エキストラを目指す22歳
「未来はまだ来ていないので、まずは考えない」

エキストラを目指す22歳
「明日がどうなるかは関係ない。今を楽しめばそれでいいんです」

未来を描けず、厳しい現実から距離を置こうと、もがく若者たち。新たな課題がいま、中国社会に突きつけられています。