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体重もミサイルも激増…金正恩氏の2022年 「愛するお子様」サプライズ公開で今後は…

2022年12月29日 14:00
体重もミサイルも激増…金正恩氏の2022年 「愛するお子様」サプライズ公開で今後は…
金総書記と第2子「キム・ジュエ」とみられる少女(朝鮮通信)

2022年、北朝鮮はミサイルの発射実験を激増させた。過去最多の発射回数だ。一方、体重の激増も指摘される金正恩総書記。核実験よりも早く決断したのは、予想だにしない娘の公開だった。北朝鮮はどこに向かおうとしているのか。
(NNNソウル支局 河中春樹)

■ふっくら金総書記にそっくりな娘公開

2022年、金正恩(キム・ジョンウン)総書記をめぐり、再び注目されたのが、その体形だ。韓国の情報機関・国家情報院は、体重が140キロまで増加したとの分析を示した。2021年には120キロまで減少したと推定されていたため、元の体重まで20キロ“リバウンド”したことになる。

ただ、健康状態は良好との分析で、確かに写真ではふっくらしたという印象だ。11月、このふっくらした顔にうり二つな少女が登場し、関係国を驚かせることになる。

北朝鮮メディアはICBM(大陸間弾道ミサイル)の発射実験についての報道で、金総書記と手をつなぐ少女の写真を大々的に公開し、「愛するお子様」が同行したと伝えた。

金総書記の子どもの動静が公式に報じられるのは初めてで、韓国の国家情報院は第2子の「キム・ジュエ」との見方を示している。

公開の理由については、「未来世代の安全保障に責任を負うとの意志を示すため」と分析した。つまり、アメリカや韓国などの軍事的な脅威から子どもたちを守るためのミサイル…という理屈だとみられる。

「子ども」と「ミサイル」という、一見ミスマッチな状況を通して、国内向けに厳しい経済状況の中でのミサイル開発を正当化し、成果をアピールする狙いが見える。

■ミサイル発射激増…資金はどこから?

2022年、北朝鮮によるミサイル発射は、前年と比べて大幅に増加した。韓国外務省が12月上旬、国会に報告した分析によると、弾道ミサイルの発射は31回、63発にのぼる。これは過去最多を大きく上回っている。ICBMも8回発射していて、「前例のない頻度と強度」と指摘している。

5月に発足した韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)政権は、北朝鮮に厳しい姿勢を示し、アメリカや日本との連携を強めている。北朝鮮としては米韓の合同軍事演習などを口実にミサイル発射を繰り返し、着々と軍事力強化を進めている形だ。

ただ、経済難の中、発射実験の資金はどこから得ているのか。11月、アメリカと韓国による共同のシンポジウムが開かれた。

韓国外務省の金健(キム・ゴン)朝鮮半島平和交渉本部長は、北朝鮮が3月、ゲーム会社をハッキングして6億2000万ドル、日本円でおよそ800億円相当の暗号資産を盗み出した事例を紹介。今年上半期に行った弾道ミサイル31発の発射にかかる費用を賄えると指摘した。

こうした中、日米韓の3か国は12月、北朝鮮への追加制裁措置を発表。日本が資金凍結の制裁に加えた対象には、北朝鮮当局の下部組織とされるハッカー集団「ラザルス」も含まれた。

日本の警察庁は10月、「ラザルス」を名指しして、数年にわたり日本の暗号資産関連企業を標的としたサイバー攻撃を行っていると強く推察されると公表していた。

「ラザルス」をめぐっては5月、国連の安全保障理事会でアメリカが作成した北朝鮮への追加制裁決議案で資産凍結が盛り込まれたが、中国とロシアが拒否権を行使し否決された経緯がある。

韓国政府は11月、「北朝鮮が核実験など重大な挑発を強行すれば、サイバー活動に関与した人物らを対象に制裁を検討する」と表明した。さらに、12月には国籍を偽った北朝鮮のIT技術者らが得た外貨が核・ミサイル開発に使われているとして、企業に異例の注意喚起を行った。

日米韓3か国の高官協議でも、サイバー活動などを通じた核・ミサイルの資金調達を遮断するようさらに努力することを確認。

北朝鮮のミサイル発射を防ぐ有効な手立てがない中、“重要な資金源”であるサイバー分野の外貨稼ぎを遮断しようとする動きが加速している。

北朝鮮は7回目の核実験を強行するのか――2022年はこの懸念がつきまとった。始まりは1月、金総書記出席のもと行われた党の会議で「暫定的に中止していた全ての活動の再稼動を迅速に検討するよう指示した」と、核実験やICBM発射の再開を示唆したことだった。

ICBMについては早々に発射実験を再開した。核実験へ警戒感が一気に高まったのは5月。アメリカ政府が「早ければ5月中にも核実験の準備が整う可能性がある」との分析を示し、6月には「準備を終え、いつでも実験ができる」と明らかにした。

その後、韓国の国家情報院は中国共産党の党大会後の10月下旬からアメリカ中間選挙前の11月上旬までの間に実施の可能性があると具体的な時期に言及するなど警戒が続いた。結果、ミサイル乱発で軍事的緊張は大きく高まったものの、現在まで核実験は実施していない。

一方でアメリカや韓国は引き続き「金総書記の決心で、いつでもできる」との見方を維持している。

北朝鮮では12月26日から、朝鮮労働党の重要政策を決定する中央委員会の総会が開かれていて、金総書記が国防力強化について、2023年の新たな中核目標を示したという。また、1月17日からは国会にあたる最高人民会議が開催される。

2022年9月の最高人民会議では核兵器の使用条件などを定めた法令を採択し、金総書記は「絶対に核を放棄することはできない」と強調した。金総書記は2023年を建国75年と朝鮮戦争の休戦70年にあたることから「歴史的で重要な年」と位置づけている。2023年も核実験、ミサイル開発への懸念が続く1年となりそうだ。

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