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感染拡大でも規制解除…英“コロナと共生”

2021年7月13日 20:24

新型コロナウイルスの感染拡大が続くイギリスでは、首都・ロンドンを含むイングランドでの規制が、全面的に解除されることが決まりました。ジョンソン首相はコロナと共生の道を歩むとしているのですが、感染が再拡大する中、一体なぜなのか、詳しくお伝えします。

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■東京は第5波とみられる感染再拡大が続く

東京では12日、新たに502人の感染が確認されました。先週月曜日から160人増加して、23日連続で前の週の同じ曜日の人数を上回っていて、第5波とみられる感染再拡大が続いています。

一方、12日は新たに87人がインドで確認された感染力の強いデルタ株に感染したと発表されました。都内のデルタ株の感染者は1000人を超えて、市中感染の広がりとともに、急速な置き換わりが懸念されます。


■感染拡大の中…英“日常生活に近い状態”へ

イギリスでも、このデルタ株によって急速な感染拡大が続いています。12日、ジョンソン首相が会見して、今月19日以降、首都・ロンドンを含むイングランドで、規制を解除する計画を発表しました。

ジョンソン首相「(19日から)法的な規制を解除します。ソーシャルディスタンスに関する規制もなくなります」

《具体的な計画は以下の通り》

●劇場や映画館、スタジアムの収容人数制限などをなくす
●ナイトクラブの営業も許可
●在宅勤務推奨の解除
●屋内でのマスクの着用義務の廃止

ただし、公共交通機関など人が多い場所では「マスクを着用すべき」としています。

この計画により、ほぼこれまでの日常生活に近い状態になりますが、ジョンソン首相は、パンデミックは「終わっていない」として、引き続き感染防止を呼びかけています。マスクも、混雑した電車内と深夜のがらがらの状態は違うとして、政府による一律の命令から個人の責任に任せるとしています。


■イギリス保健相「夏には1日10万人の可能性」なぜ規制解除?

感染者が急増しているのに、規制解除するのはなぜなのか。イギリスはコロナを見る指標について、「感染者数」よりも「入院患者数と死者数」を重視して政策を決定するようになりました。

イギリスの1日の感染者数を見てみると、今年1月のロックダウンのときには7万人近くにまで増えました。その後、下がりましたが、6月に入ってからまた増えて、12日には3万5000人近くにまでなっています。イギリスの人口は日本の約半分なので、単純に感染者の数でいうと1日で日本の20倍以上の感染者が確認されているということになります。

さらに、イギリスの保健相は12日、「夏には1日10万人に達するかもしれない」と発言しています。1日10万人の感染者が出るかもしれないのに、全面的な規制解除をしようとしているのはなぜでしょうか。


■“ワクチン効果”で死者数は低い水準に

イギリスでの入院患者数は、1月には4万人近くいましたが、今月8日は2731人に減りました。死者数も、今年最も多いときで1820人だったのが、12日は6人。感染者数は増えているのに、入院、死者数は低い水準に抑えられているのです。やはり、これはワクチンの効果といわれています。

イギリスのワクチン接種率は、世界で見ても速いペースで接種が進んでいて、10日時点で67.6%が1回の接種を終えています。日本のワクチン接種状況は12日時点で約30.3%。イギリスは日本の倍以上のワクチン接種率です。

イギリスも高齢者からワクチン接種を進めていて、現在の感染者の多くは、まだワクチンを接種していない比較的若い世代。重症化リスクが高いとされる高齢者へはそれほど感染が拡大していないため、全体として入院患者や死者の数を抑えられている形です。こうした理由から、感染者が1日に何万人出ても、日常の生活を取り戻す経済復活を優先。まさにコロナと共生する新たなフェーズに入ったといえます。

日常生活でも、ロンドンのレストランではすでに変化が出ていました。

レストランの店長「来週からは誰とでも食事ができる。通常の状態に戻りつつあります」


■日本は…専門家「しばらく我慢が必要」今後の動向を注視

では、日本はイギリスのように「コロナと共生」する状況になることはあるのでしょうか。感染症の専門家、大阪大学医学部感染制御学講座の忽那賢志医師は「日本はイギリスほどワクチンの接種率が高いわけではなく、解除できる段階ではない。もうしばらく我慢が必要」と話しています。その上で、イギリスの規制解除については「かなり思いきった方法だ。感染者が爆発的に増えると、重症者も増えるのではないか。もう少し段階的な解除も選択肢としてあったのでは」と指摘。とはいえ、イギリスの政策は日本にとっても参考になる面があるのかどうか、動向をみていくことは非常に重要だとしています。


■「コロナとの共生」どうなる?

イギリスは感染が急増しているさなかに制限を解除しようとしていて、こうしたことは世界でも例がないといえるでしょう。現地メディアにも「これはどのぐらいの賭けなのか」といった論調があるように、リスクが伴うものです。各国が今後の動向を注視することになります。


(2021年7月13日午後4時ごろ放送 news every.「ナゼナニっ?」より)