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北朝鮮、今度は“弾道ミサイル発射”目的は

2021年9月15日 18:47
北朝鮮、今度は“弾道ミサイル発射”目的は

韓国軍によると、15日昼ごろ、北朝鮮が弾道ミサイル2発を発射しました。北朝鮮のミサイル発射について、詳しく説明します。

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■“弾道ミサイル発射”金正恩氏就任から合計92発に

菅総理大臣が午後1時半ごろ、会見しました。

菅総理
「先ほど北朝鮮が、弾道ミサイルと判断されるものを、発射をいたしました。わが国と地域の平和と安全を脅かすものであり、言語道断です。米国や韓国をはじめ関係国と緊密な連携をし、国民のみなさんの命と平和な暮らしを断固として守り抜いていきます」

北朝鮮は、「長距離巡航ミサイルの発射試験に成功した」、と発表したばかりです。国内で一体何が起きているのでしょうか。これまでに判明している情報をまとめます。

海上保安庁は15日昼過ぎ、「北朝鮮から弾道ミサイルの可能性があるものが2発発射された」と発表しました。1発目は午後0時38分、2発目は午後0時44分に、船舶に対して警戒を呼びかける「航行警報」を出しました。

このミサイルは、日本の排他的経済水域の外に落ちたとみられます。また、韓国軍は、弾道ミサイルは北朝鮮中部の内陸から発射され、日本海に落下したとしています。今回の飛行距離は、およそ800キロ、高度は60キロあまりと探知したと発表しました。海上保安庁によると、これまでに被害の情報は確認されていないということです。

北朝鮮が弾道ミサイルを発射するのは、3月25日以来、およそ6か月ぶり、今年2度目となります。防衛省のまとめによると、金正恩氏が就任後の2012年から北朝鮮は90発の弾道ミサイルを発射していて、今回が弾道ミサイルだった場合、合計92発を発射したことになります。

■「長距離巡航ミサイル発射成功」北朝鮮の動き活発に

今回のミサイル発射について、外務省幹部は「韓国がSLBM(=潜水艦発射弾道ミサイル)の発射試験を行っていることへのけん制ではないか」と分析しています。また、別の幹部は「アメリカなどの気を引く行動を取ることで関心を高め、対話のテーブルにつく際の条件や値段をつり上げているのではないか」という分析をしています。

また、官邸幹部は「世界の関心がアフガニスタン情勢に集まる中、関心を引きたいという意図もあるのだろう」と述べています。

北朝鮮の動きは今月に入り活発になっていて、13日付の労働新聞では、新型の「長距離巡航ミサイルの発射試験に成功した」と明らかにしました。これは巡航ミサイルで、2時間6分20秒飛行し、およそ1500キロ先の標的に命中したとしています。

では、弾道ミサイルと巡航ミサイルには、どのような違いがあるのでしょうか。今回、発射された弾道ミサイルは、放物線を描いて、高角度で飛行し、高速で落下します。一方、巡航ミサイルは、超低空を飛行機のように水平飛行します。低速ですが命中精度が比較的高く、レーダーで探知されにくい特徴があります。

さらに、弾道ミサイルの発射は、国連安全保障理事会の決議で禁じられています。一方、巡航ミサイルは規制の対象ではない、という違いがあります。

■“6か月ぶり弾道ミサイル発射”北朝鮮の目的は何か

では、およそ6か月ぶりに、いま、北朝鮮が弾道ミサイルを発射した目的は何か、北朝鮮政治に詳しい慶應義塾大学礒崎敦仁教授に、話を伺いました。

礒崎教授は、「今年の大方針であり“有言実行”といえる」といいます。というのも、北朝鮮は今年1月、5年ぶりに朝鮮労働党の党大会を開いていて、そこで、金正恩総書記は「国防力の強化」を掲げ、さまざまな戦術核兵器の開発を推進すると表明しています。

礒崎教授によると、「こうした兵器の開発は既定路線であって、どのタイミングで発射するか」であったというわけです。

さらに、最近の金総書記ですが、今月9日の姿は、頬のあたりがやせたようにもみえます。7月の時点で10キロ~20キロやせたといわれましたが、その時よりさらにやせているようにみえます。

北朝鮮としては、新型コロナ対策による国境の閉鎖や、経済制裁が続いて、国内の状況が厳しさを増しているとも言われています。礒崎教授は、「金総書記が意識しているのはやはりアメリカで、トランプ前大統領とは対話は進んでいたが、バイデン政権では停滞しているためアメリカに遠慮する必要がなくなった」と話しています。

8月に米韓の合同軍事演習がありました。さらに、韓国メディアは先週時点で、15日にも韓国軍が「SLBMの最終発射実験」を行うと報じていました。礒崎教授は、こうした「アメリカや韓国の動きに反発する狙いもあった」と分析しています。

礒崎教授は、「国防力の強化」が国の大方針であり、既定路線であるということを重視していて、「今後、北朝鮮がミサイル発射を行う可能性は十分ある」と指摘しています。

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北朝鮮はここ数年でミサイル技術を急速に進展させていて今後、継続して発射実験を行うことが十分考えられ、政府の分析が急がれます。

(2021年9月15日午後4時ごろ放送 news every.「ナゼナニっ?」より)