プーチン氏は“戦争の大統領”―。ロシア政治の専門家がウクライナ侵攻の先行き分析
ロシア政治の専門家がウクライナ侵攻の先行き分析<リード>間もなく10か月を迎えるロシアによるウクライナ侵攻。ロシア大統領府のぺスコフ報道官は14日、ウクライナからは“新年停戦”の提案はなかったと述べた。ロシアが“特別軍事作戦”と称するこの戦いは果たしていつまで続くのか。ロシア政治を長年見てきたカーネギー国際平和財団アンドレイ・コレスニコフ上席研究員が書面インタビューに応じた。
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■プーチン氏演説に説得力はない
――ロシアの“特別軍事作戦”について「プーチン大統領の考え方」は“作戦”が始まった去年2月24日から変わったと見ていますか?
はい、変わりましたね。彼や彼のエリート、宣伝マンたちは、議論の説得力に注意を払うことをやめてしまったのです。もちろん、これは“作戦”が長引き、それを正当化することが難しくなってきたことが原因です。
プーチン氏は、もはやそれを正当化するのではなく、たとえば「領土獲得」に成功したとか、野蛮なミサイル攻撃はクリミアの橋の破壊工作に対応したものだとか憶測で語っています。
――ことし9月の「部分的動員」発表はロシア社会を変えたと考えますか?
動員の発表で社会の不安は高まりましたが、反対派が大きく増えたわけでもありませんでした。「抗議」の代わりに新たな「適応」がなされたのです。
しかし、和平交渉の支持者はわずかに増えていますね。戦争に対する国民の疲弊があるのだと思います。
■プーチン氏は“戦争の大統領”
――“特別軍事作戦”は「いつまで続く」と考えていますか?
その答えはプーチン氏にしかわかりません。今のところ、すべての兆候は、それが長く続くということだけです。プーチン氏は“戦争の大統領”であり、それは彼の政策の本質です。そして今のところ、彼が妥協と交渉に応じる用意があることを示す兆候はひとつもないと見ています。
――“特別軍事作戦”が「終わる」とすると「落としどころ」はどこにあると思いますか?
それは彼の条件によってのみ可能であり、その条件はウクライナにとっても文明世界にとっても容認できるものではありません。いま妥協する余地はないのです。プーチン氏の下では、紛争が凍結されても、いつその凍結が解けるかわからない。核兵器の衝突を回避するのが精いっぱいでしょう。
これまでプーチン氏に代表されるロシア側は、「核ドクトリン(核兵器の使用条件)」変更の可能性を曖昧に示唆しています。ロシアの外交官はカイロで行われるはずだった新START(=新戦略兵器削減条約)に関する協議さえ拒否するように命じられていました。
■2024年大統領選挙との関係
――“特別軍事作戦”の継続は「2024年ロシア大統領選挙」と関係しませんか?
いまのところ「2024年大統領選挙」は“特別軍事作戦”の決定とは関係がないと考えています。しかし、少なくとも2023年の秋以降は大統領選挙への準備が始まるはずで、そのときプーチン氏は少なくともいくつかの新しいメッセージを打ち出さなければならないでしょう。
しかし、その内容は軍事作戦の進展具合に左右されることになるでしょう。
写真:ロシア大統領府提供